ウニは日本独自の食材で、外国ではあんな真っ黒でトゲトゲして海の底にころがっているおぞましい食べものを食べることはない…。
ウニのスパゲッティ、通称ウニスパは、タラスパ、つまりタラコのスパゲッティと並んで、日本人が日本の食材とイタリアのスパゲッティを融合させた、独自の発明である…。
もしかして、あなたはそう思っていませんか?
賢明なる読者は、僕がそういう書き出しをするときは、だいたいいつも「じつはそうではないのです」となることにお気づきだろう。
じつはそうではないのです。
イタリアにはRicco di mare(ふつうは複数形でRicci di mare:リッチディマーレ)という食材がある。これこそ、まごうかたなき、ウニである。
riccoというのは、くるみの殻のことだ。なるほど、たしかに黒いトゲトゲの外壁を割って中からでてくるオレンジ色のウニの身は、くるみの殻 のような色と形をしている(di mareとは「海の」という意味)。
で、これをスパゲッティにまぜた料理がイタリアにちゃんとある。主に南イタリアでお目にかかる。
これがめちゃうまい。
タラスパも同じで、bottarga(ボッタルガ)という食材で、タラではないけれども、よく似たボラのタマゴ、どちらかというとカラスミに近いが、かなりポピュラーな素材で、これもいうまでもなく、とてもうまい。
イタリアでは、タコもそうだが、ほかのヨーロッパの国ではあまり食べない海産物もよく食べるから、そういう意味では姿や形がどうあろうとも、おいしいものはどんどん食卓に持ち込むというところは日本とイタリアの共通点かもしれない。
フランスでも、1980年代に日本料理の影響でいわゆるヌベールクジーンがはやりはじめたころから、日本の食材、なかでもサシミや生のウニはこぞって使われるようになった。
いまのフランス料理では、かなりふつうに使われる素材だ。メインコースの食材というより、アミューズ・ブーシュ(前菜)やスープにちょっと使ったり、メインコースなら飾り兼うまみ増進のために使うというケースが多い。
あのトロッとしたまろやかな香りの食材は、フォアグラをも彷彿とさせるうまみのかたまりといってもいい。肉にもあうし、さかな料理にもあい、僕もフランスでなんど楽しませてもらったかわからない。
もちろん米やパスタなどの炭水化物にもよくマッチする。
その名称についていえば、どうしてウニというのかは知らないが、日本語の漢字では海栗とか海胆、雲丹などいろいろの書きかたをする。どれもなかなかいい得て妙である。
中国語では海胆。
さて、それでは英語ではなんというでしょう?
もちろんsea urchinですね。
でも、urchinってなんだかわかりますか?
僕も知らなかったのだが、辞書によると、「みすぼらしい小僧」のことだそうで、それもなんとなくいい得て妙である。
要は、ヘンな形をしているから、いろいろな連想をあてはめているのだろう。これもいい得て妙である(と僕は思います)。
LAではココ!「予算」は2人分です
Tanino
ウニスパがメニューにある(要確認)イタリアン。南イタリア主体のメニューで、味のレベルはとても高い。
予算:$80
1043 Westwood Blvd., Los Angeles
☎310-208-0444 www.tanino.com
Lunch: Mon-Fri 11:00am-2:30pm
Dinner: Mon-Sat 5:00pm-Close
Sun 4:30pm-Close
Open 7 Days
Mosto Enoteca
マリナデルレイの何の変哲もないような小さなモールの二階にあるイタリアンだが、小さい店内やパティオの席にすわるとなかなか感じがいい。ウニスパがスペシャルであることもある。パスタはアルデンテでおいしい。
予算:$80
517 Washington Blvd., Marina del Rey
☎310-821-3035 www.mostoenoteca.com
Daily 5:30pm-10:30pm
Open 7 Days
(2011年11月1日号掲載)
海栗海胆雲丹ウニ
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