あれあれ、ミスター世界とやら、ついにネタがなくなったとみえて、『水』なんかについて書いてるよ、といわれるかもしれない。
じつはこれで117回になるこのシリーズ、まだまだネタが切れる予定はないので、ご安心ください(ご容赦ください)。
僕にいわせれば、食事中にのむ水、これはけっこうポイントであると思っているわけで、今回はそれについて書きたかったのである。
僕はいつでも酒をのんでいるようなイメージがあるかもしれないが、じつはそんなわけではない。
もちろん、フランス料理やイタリア料理を食べるときはワインをのまないわけにはいかないが、それ以外は、食事中には酒はのまず、水をのむことがおおい。
水だったらおなかもふくれず、頭や味覚をクリアーに保ってくれるし、そもそもパレット・クレンジング、つまり口蓋の清浄という効果がすばらしい。
水を少しのんでから料理を口に入れれば、そのたびに明快にその料理の味わいを感じることができるのである。
フランス料理でワインをのんでいるときでも水は不可欠で、パレット・クレンジングとともに、血中のアルコールも水でなるべくうすめて、酔いを進行させないようにして、味覚を研ぎ澄ませておく。
アメリカでは、むかしはどこのレストランでもテーブルに座るとまずコップに入った水がでてきたものだった。
それがあるとき突然出なくなったのは、いつかの水不足のときだったと思うが、それ以来、水不足が解消したあとも、水はほとんどの店では頼まないと出てこなくなった。
これは、できるだけお酒かソフトドリンクを注文させようというレストラン側の企てもあるのではと思うのだが、まあ、むかしからだまって水が出てくるのはアメリカと日本とギリシャくらいだった。
ヨーロッパではまずだれもがボトルの水を注文する。
「Evian」や「Vittel」といったミネラルウォーター、または「San Pellegrino」や「Perrier」といった炭酸入りの水だ。
ヨーロッパでは、レストランで料理を注文し、ワインを注文すると、かならず「水はいるか」、ときかれる。
そして、炭酸入りかそうでないかのチョイスも聞かれる。
それぞれフランス語なら「gazeuse」か「non gazeuse」、イタリアなら「gasata」か「non gasata」、英語なら「sparkling」か「still」、などというわけだが、このガス入り水というのも悪くないのである。
パレット・クレンジングの効果がガスなし水より強く、また口のなかに適度な刺激があるから、満足感がえられる。
たとえば、そのあとに車を運転しなくてはいけないのでワインを飲まないようなときは、sparkling waterがいい。
すくなくともコカコーラやセブンアップよりは料理の味をじゃましない。
しかし、ヨーロッパのレストランでも、お金を払ってボトル入りのミネラルウォーターを頼まなくても、水道の水を頼むこともできる、っていうことはご存じですか?
フランスのレストランなどでは、たしかにみんながミネラルウォーターのボトルをテーブルにおいて食事をしているから、水道水はのむことはできないのだと思っている日本人の旅行者も多いようだが、そんなことはない。
フランスでもイタリアでもドイツでも、水道の水をそのままのんだってちゃんとおいしい。
頼みかたは、当地なら「tap water」とか「Los Angeles City water」などといえばいいし、フランスではただ「du l’eau(some water)」といえば、ちゃんとピッチャーにいれた水をもってきてくれる。
「du robinet(tap water)」といえばなお確実だ。
ボトル入りのミネラルウォーターは、やすいワインよりも高いお金をとられるから、タダというのはうれしい。
というわけで、僕はいつも水の価値を見いだしているわけである(単にケチかもしれないですね)。
(2005年10月16日号掲載)
みず
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