このあいだ韓国に行ったとき、以前に比べて感じたのは、レストランの入り口の看板やメニューに、日本語がふえたことだ。
日本人観光客が急増したこともあるだろうが、日本人の来そうにない地域や店でも、ちゃんと日本語が書いてある。
これは、日本で英語を使うのとおなじ、ある種のカッコよさを追求したものだと思う。
しかし、これが、必ず笑える日本語なのである。
笑えるという意味では、日本で看板やメニューに使われてる英語だって決してひけをとらないし、ヨーロッパでもおかしな英語はいくらでも見られる。
今回はいままでに集めたおもしろい韓国式日本語メニューを、いくつかご紹介しよう。
すべて僕自身が目にして、厳密に原文どおり書き留めてきたものである。
「みそチデ定食」
「つゐにんじん焼き」
「どじょうの者迂み鍋」
食材はなんとなくわかるのだが、料理としてはちょっと不気味である(苦労して解読した結果を、いちばん下に書いた)。
「お飯る物」
これを解明するのには一年かかった。
「スソドフ」の種類に、「カイセニ」と「ゴシブチョソ」がある。
「スソドフ」がスンドゥブとわかる技術を身につけた僕としては、カイセニは海鮮だとわかった。
だが「ゴシブチョソ」には参った。
食べてみたら牛腸入りだったが、なぜ「ゴシブチョソ」かはいまだにわからない。
「カソユク定食」(韓国定食)
「まじぇゴハン」
「タニ焼き」(タコ焼き)
「カルビまりそば」
あたりはカワイイといえる。
しかし「まりそば」が「もりソバ」だとわかっても、何故カルビがつくのかは不明。
すこし複雑な料理だと、
「海藻とねぎの敗り合わせ韓式本場おこみ焼き」
「炒め野菜とはるざめのつけ合わせもの」
「海産物鍋と少麥ご飯セシト」
なんていうのがあるが、これらはよく読めばわかる。
ところが、
「甘味の冷やし野菜入りデうッスそめん」
これはどんな料理かまったく想像できない。
「いなり腐し」
「豆腐ケヂ」
「野(のびる)ともに洞窟(どうくつ)煎」
となると、ちょっと恐怖感をおぼえる。
「野」と書いて「のびる」と読ませるところもすごいが、洞窟に住む蛭(ひる)の一種でも煎じてでてくるのだろうか。
というわけで、ツとシ、ンとソの自由な互換性、ツとッ、ウとゥなどのまったくの同一視。
濁点があろうがなかろうが完璧に無視。形が似た字があれば、入れ替えることはなんら差し支えない…。
どこの店に行っても、みごとにこれらの共通点が見られる。
もしかしたら、メニューを日本語に翻訳するのは、韓国内のどこかにひとりのおじさんがいて、すべて一手に引き受けているのではないだろうか?
(2007年4月16日号掲載)
愛すべきかな、韓国メニュー
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