アメリカのコーヒーショップでオムレツなどをたのむと、トーストがついてくる。
これがどうもうまくない。
パンの質もさることながら、薄すぎる。
トーストというものは、厚切りがおいしいのだ。
日本の喫茶店のモーニングサービスの、あの厚いトースト、あれこそがうまいトーストだ。
当地の日系マーケットで売ってるパンも、サンドイッチ用の薄いのとトースト用の厚いのがあるが、僕としてはその厚いほうの1.5倍くらいの厚さのものがほしいと思う。
僕の好きなトーストというのは、できるだけ厚いトースト用パンを、トースターオーブンの中で何度か裏返しながら、均一になるように焼く。
焼きあがったら間髪をいれずバターをたっぷり塗る。
マーガリンは不自然だからキライで、マーガリンを使うくらいならトーストは食べない。
そして、塗るバターの温度、つまり硬さが重要である。
溶けすぎて全部パンに滲みこんじゃってもだめ、硬すぎて、ナイフで塗りつけるときにパンの表面が陥没してもだめ。
滲みこんだ部分と原型をとどめて少し盛り上がっている部分の混在する「ムラムラ」がいちばんだ。
噛んだときに溶けたバターがチュッと口に入ってくるかと思えば、形のある部分が舌にのったあとにスルッと溶ける、このしあわせ!
適当な硬さにするためには、僕は冷蔵庫から出した少量のバターを電子レンジで溶かし、そこに冷蔵庫のままの冷たく硬いものを練り合わせて、ピタッと思い通りの硬さを作る。
さて、バターを塗ったトーストの上には、何をのせて食べるか?
そもそも、トーストというものを食べる国は、イギリスとその息のかかった国である。
つまり、アメリカやオーストラリアなどだ。
イギリスやオーストラリアでは、もちろんジャムやマーマレードも塗るが、MarmiteとかVegemiteという名の、イーストから作ったペースト、これがいちばんというひとも多い。
僕もトライしてみたが、味は奇妙奇天烈としかいいようがない。
僕が好きなのはなにかというと、アミの佃煮、コブの佃煮、あるいは錦松梅。
バターの香りとマッチしてじつにうまい。
どうです、ユニークでしょう。…と書こうと思って、一応ネットをチェックしてみたら、とんでもない。
驚いたことに、日本人には、トーストにのせるものは、これこそがいちばん!と自慢するひとたちがたくさんいるのである。
それが、焼きそば、ポテサラ、ツナマヨあたりは納得できるが、らっきょうだったり、納豆だったり、カツオの塩辛だったり、あるいはネリウニ、わさび漬け、キンピラetc.となると、
うーむ、これは試してみなくちゃわからない。
単にトーストといっても、じつはそれぞれの国民にとって、とてもこだわりと奥深さのある食べものだったのです。
(2007年7月1日号掲載)
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