新年おめでとうございます。
なにか正月にちなんだものを書かなくっちゃ、と思ったが、8年目に入るこのシリーズではもうすでにいろいろなものをとりあげてしまった。
でもまだカキがあったぞ。
香港の正月(ただし旧正月)にはカキを食べる習慣がある。
「鼓」(干したカキ)の発音「ホウシー」が「好市」(良い市況)と似ていて、「発財」(金が儲かる)と似た発音の「髪菜」といっしょに、「発財好市」という名の料理にして食べるのだ。
結構、うまい。
それで正月との関連づけは済んだ、と。
いずれにしても、カキは冬の風物詩だ。
カキはrのつく月(9月から4月)に食べろと言うが、それ以外は傷みやすいということもさることながら、カキは夏の始めの産卵にむけ、冬に栄養を蓄えるからうまいのだ。
風物詩という言葉がいちばんぴったりするのは、パリである。
レストランの入り口の道路上に台を出して、氷を敷き、その上に生ガキをズラッとならべている。
あるいはただ「Hutres」(カキ)という看板だけで食欲をそそっている店もたくさんある。
最近のスシブームになる以前は、ヨーロッパ人は海産物のナマなんてとんでもない、という感じだったが、カキだけはなぜかずっとナマで食べていた。
有史以前の貝塚にもその形跡があるらしい。
なにしろ、うまい。
「du lait de la mer」、海のミルクと呼ばれるのは、栄養素が豊富だということもあるが、舌触りや香りもトロッとして、言い得て妙だ。
その上にかけるソースが一辺倒ではない。
いちばんポピュラーなケチャップベースのカクテルソースのほかに、酢と玉ネギのみじん切り、タバスコ、タルタルソース、あるいは単にレモンと塩、などなど。
コニャックを一振り、というのを食べたことがあるが、非常にオツだった。
生ガキの特産地というのは世界のあちこちにあり、フランスではブロン(Bron)がいちばん有名で、うまいとされている。
ブルターニュ地方の海沿いにはカキ街道「La Route des Hutres」と呼ばれるところがあり、海岸沿いのルートを走りながらステキなホテルに泊まって各地のカキを食べ歩くのだ(僕はまだやったことがないけど、いちどやってみようと思ってます)。
アメリカではニューヨークのグランド・セントラル・ステーションの立ち食いカキが有名で、僕も食べてみたが、立ったまま半ダースほど食べてさっと立ち去るというのがなかなかイキである。
やはり有名なボストンのカキも食べたし、日本では広島のカキもおいしかったが、いちばん記憶に残るのは能登半島。
海辺のさびれた漁師小屋兼食堂で、いてつく真冬にカキづくしを食べた。
取りたてのナマをたらふく食べたあとに、カキフライをいくつか、そしてカキなべとカキ御飯で体を暖める。
食べたあとの貝殻は小屋の外に投げ捨てる(将来ここが貝塚になるのかな)。
日本のカキが世界でもっともうまいもののひとつであることは確かである。
(2008年1月1日号掲載)
正月はカキを
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