ワンタン、って「うどん」のルーツだって知ってました?
僕も知らなかったけど、Wikipediaに、そうであろう、と書いてある。
ワンタンは現代の呉方言で「餛飩(ウンドン)」と言うのだそうで、そういえば日本でもうどんのことを餛飩と書くことがあるし、呉と言えば古くから日本語に入った中国語のルーツの中心地である。
僕も中国の南部(呉もそうだが)を旅していると、漢字の読み方が日本語に似ていて驚くことがある。
ワンタンは、むかし中国南部で、桶を担いで家々のあいだを売り歩いたものらしい。北部なら担々麺である。
香港のワンタンは「雲呑」と書く。
これは「ウンドン」と「ワンタン」の中間のような発音で、呉の餛飩とたぶん同じ発音だから、だれかが漢字を入れ替えたのだろう。たしかに、ワンタンは雲のような形をしたものを呑むわけだから、言い得て妙である。
北京語ではこの漢字は「ユンノン」という発音になるのだが、ワンタンでも通じることが多い。
で、香港の雲呑はめちゃおいしい。
香港に行く楽しみのひとつにワンタンがあると言っても過言ではない。
ニュルリッと口に入り、プリプリッと歯にこたえる。
この食感がなにものにも比べがたい。
グは主にエビだから、香りもいい。
香港のエビは香りがいい。どうやって調理しても、である。
ワンタンのスープは必ずクリアースープだ。
これがいちばんよくあう。干しエビや干し魚のダシである。
クリーム風味とかカレーバージョンで食べてみたい、とはまったく思わない。
ただし、四川地方には紅油炒手というワンタンがある。これはご想像のとおり、激辛バージョンだ。
ただし、スープがほとんどなく、ワンタンそのものも小さく、ちょっと違う食べものと言っていい。
さて香港に話を戻すが、ワンタン麺がまたいい。
香港風の黄色く細いタマゴ麺で、茹で方は必ずアルデンテ。
このスープには、ちょっと赤い酢を入れてもまたちょっと違う味わいになり、とてもうまい。
さらには、ワンタン麺には芥蘭菜という野菜が姿のまま入る、という決まりがある。
英語でチャイニーズ・ブロッコリーと言われるいわゆるカラシ菜で、ほかの野菜では不可である。半茹での芥蘭菜の、ボリボリとした歯ごたえが、ニュルプリ感によくマッチするのである。
ニュル・プリ・ポリ。
これが、ワンタン麺を食べるときの、ツルツル、ムシャムシャ、ゴクゴクをはるかに凌駕する、ワンタン麺の三大サウンドである。
それにしても、日本で食べるワンタンって、なぜかほとんど皮だけですね。ニュル感はあるのだがプリ感もポリ感もない。
あれではワンタンを食べたことにならないです。
(2008年10月16日号掲載)
雲を飲み込むワンタン麺
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