イタリアン・レストラン食習慣

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Mr.世界(イタリアン・レストラン)

以前書いた、「韓国レストランの食習慣」がご好評をいただいたので、調子にのって今回はイタリアン・レストランでの習慣について。
韓国の次なら中国じゃないの、と思われるかもしれないが、日本の多くのひとが知ってるつもりで知らない習慣ランキングNO.2がイタリアなのである。
 
まずは、パンの食べかた。
レストランに入ると、テーブルにすぐ「pane」つまりパンがバスケットに入って出てくる。これは別におどろかない。
 
しかし、近ごろのアメリカや日本のイタリアン・レストランでは、オリーブオイルとバルサミコをテーブルにおいて、これをつけてパンを食べろ、というところが多いので、イタリアでもそうすると思っているでしょう? これがちがうのですね。
 
僕はイタリアは数十回旅をして、北はアルプスから南はアフリカ沿岸まで行ったが、レストランでパンにオリーブオイルをつけているひとは1度もみたことがない。
そもそも、テーブルにオリーブオイルやバルサミコは、サラダをたのんだときに出てくるだけである。
 
ではパンはどうやって食べるかといえば、かれらはなにもつけないか、もしくはバターだ。
バターがテーブルに出ていないこともよくあるので、ウェイターにリクエストする。
イタリア語でバターのことは「ブーロ」である。
 
余談だが、イタリア語はスペイン語とよく似ていて、共通の単語が多い。
そこで、スペインや中南米を旅行中のイタリア人が、レストランでバターがほしいと、ウェイターに「ブーロちょうだい!」ということがよくあるらしい。
スペイン語のバターは例外的にイタリア語とはまったくちがって、「マンテキーリャ」と言う。「ブーロ」とはロバのことだ。
つまりイタリア人はレストランで「ロバ持って来い!」と叫んでいるわけである。
 
そして、イタリアのレストランにはカバーチャージというものがある。
別にエンターテインメントがあるわけではなくても、テーブルに座ってパンが出てきたところで、ひとり数ユーロのカバーチャージ(copperto)が発生するのだ。
請求書をみて、「頼んでないものがついてる!」と文句をいわないこと。
 
さて、次に料理の注文だが、ふつうは前菜をとって、パスタ、そしてメインコースとなる。
前菜はともかく、パスタを省略するということはまずありえない。
ましてや、パスタだけでメインを食べずに終わり、というアメリカ人や日本人がよくすることは、決してないといっていい。
 
イタリアはどこに行っても観光客になれているので、そういう注文をしてもヘンな顔をされることはないが、イタリア人はしないということを知っていても損はしないだろう。
さてパスタ、とくにスパゲッティーなどの麺をたのむと、アメリカ人や日本人は、スプーンを左手に持ち、右手のフォークをスプーンにおしつけてパスタを巻く。
イタリア人は決してそういうことはせず、右手でフォークにさっと巻きつけて食べる。
そんなこといったって、スプーンを使ったほうが食べやすいんですから、という方はそれでかまわないのだが、これもイタリア人はしない、
ということを知っていても損はしないだろう。
 
食後にカプチーノは飲まない、というのは以前にも書いた。
チェックは、こちらからリクエストしないかぎり、アメリカや日本のように持ってこない。
「Il conto, per favore(イルコント・ペルファボーレ)」。
「チェック、プリーズ」がイタリア旅行でもっとも重要なイタリア語のフレーズのひとつとなるゆえんである。
店へ入ったときの「Buona Sera(ボナセーラ)(今晩は)」や、出るときの「Grazie(グラッツィエ)(ありがとう)」、「Arrivederci(アリベデールチ)(さよなら)」は、ぜひおぼえて、大きな声で言いましょう。
 
(2006年2月16日号掲載)

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