ライトハウス・サンディエゴ版編集長、吉田聡子が、サンディエゴ生まれのブランドを訪問。世界に羽ばたいた物から、ローカルにこだわる物まで、名品の背景にある物語を探ります。
Bernardo Winery / バーナード・ワイナリー
南カリフォルニアでワインと言えばテメキュラが有名だが、現存する南カリフォルニア最古のワイナリーはサンディエゴ、ランチョ・バーナードにある。それがここバーナード・ワイナリーだ。
誕生は1889年。当時の経営者はシシリア出身の5人だったそうだが、残念ながらこの頃の詳細な記録は残っていない。そのワイナリーを1927年、ビンセント・リッゾが購入したことから、バーナード・ワイナリーの歴史が始まった。
当時は禁酒法が施行中。ワイナリーは、教会の儀式に使うワインを提供する他、オリーブを育て、オイルを生産することで苦難の時代を乗り切った。
禁酒法下では、ブドウ果汁の状態で出荷して、長い道中で発酵させるという手法も取られたそうだ。もともとビンセントはメキシコのティファナにバーを持っていたので、酒造業には厳しい時代とはいえ、勝算があってワイナリーを買ったのかもしれない。
1964年、ビンセントの息子、ロッソがワイナリーを引き継いだ。敷地内の古い建物を貸し出し、ワインだけでなくショッピングも楽しめる、まるで小さな村のようなユニークなワイナリーへと変化したのはこの時代である。
2008年にロッソが他界した後は、妻、ベロニカと、2人の娘、セレナとサマンサ、そして息子のランが運営を続けている。
取材に応じてくれたのはマーケティング担当のサマンサ。このワイナリーでは、カリフォルニアワインの定番とも言えるカベルネ・ソーヴィニヨン種を扱っていないのだそう。
「ワイン造りをしている弟のランはブドウが育つ環境、いわゆる“テロワール”にとてもこだわるの。土壌や気候、場所、全てに耳を澄ませて、この環境に合うブドウしか育てない。人気品種だからといって、環境に無理にブドウを合わせることはせず、ブドウ自身が自然で、ハッピーに育つことを大切にしているのよ」(サマンサ)。
彼女の案内で、ワイナリー内を歩いた。至るところに年代ものの道具が残されていて、さながら映画のセットみたいだ。
大きな古い樽が並ぶ昔の熟成室が何気なく開放されていて、中で子どもたちが遊んでいた。
「コウモリがいるから気を付けて」と男の子に声をかけられる。「お化けがいるかもね」とサマンサが応じると「お化けなんか怖くないもん」と返ってきた。
ワインを買って帰って家で開けるのもいいけれど、この場所で、この雰囲気の中で飲むのがまたいいんだろうなと感じた。
13330 Paseo Del Verano Norte San Diego
☎ 858-487-1866
▶ 営業時間:8am~6pm 定休日なし
※ファーマーズ・マーケットやライブも開催
▶ Webサイト:http://bernardowinery.com
(ライトハウス・サンディエゴ版 2016年9月号掲載)
※このページは「ライトハウス・サンディエゴ版 2016年9月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。