ライトハウス・サンディエゴ版編集長、吉田聡子が、サンディエゴのブランドを訪問。世界に羽ばたいた物から、ローカルにこだわる物まで、名品の背景にある物語を探ります。
Pixel on Wood / ピクセル・オン・ウッド
Pixel on Woodの作品に出会ったのはソラナビーチにあるギフトショップ、Leaping Lotusだった。カリフォルニアのビーチを写した写真はそこかしこで見かけるが、リサイクルウッドに印刷しているのが印象に残った。木の風合いが写真をどこかノスタルジックに見せ、独特の味を加えている。制作者のヴィンセントはエンシニータスを拠点に活動しており、作品はひとつひとつハンドメイドで仕上げていると知り、さっそく取材を申し込んだ。
会ってみて分かったのだが、実はヴィンセントの本職はフォトグラファーではない。薬品会社に勤める化学者だ。
「父親がプロのフォトグラファーだったことがあって、写真は父から教わりました。2000年に入ってから、身近な海や自然をテーマに写真を撮り貯めていましたが、データはコンピューターの中に保管していただけでした。出力しようと考えたのは3年くらい前かな。人とは違うユニークな媒体はないかと探して、リサイクルウッドに辿り着いたんです」(ヴィンセント)。
写真を木に印刷する機械もあるのだが、その仕上がりはヴィンセントの好みではなかった。さらに調べていくうちに、ジェルメディウムという絵画に使われる素材で木に写真を転写できることが分かった。
そのやり方とは、写真を左右反転して出力して、木の上に載せ、その上にジェウメディウムを塗って、乾いたら水に浸して髪だけを剥がすというもの。簡単そうに聞こえるが、綺麗に仕上げるコツをつかむまでには試行錯誤を繰り返したそう。
「全て手作業でやることもあって、同じ写真を転写しても、かすれが出たり、紙がわずかに残ったり、かすれる場所も違ったりで、全然違う雰囲気に仕上がるのが面白いですよ」とヴィンセント。当然、土台となる木の色やテクスチャーによっても見た目が変わる。言い方を変えればどれもが世界で1つだけの作品となる。
「僕は写真を撮るのが好きだし、きれいに撮れた写真をシェアしたいという気持ちでPixel on Woodをやっています。アート作品や家のインテリア雑貨は高価なことが多いから、Pixel on Woodは手に入れやすい価格で、気軽に家に飾れる身近なアートでありたいと思っています」(ヴィンセント)。その気負いなさがまた、作品の温かさに出ている気がした。右反転して出力して、木の上に載せ、その上にジェルメディウムを塗って、乾いたら水に浸して紙だけを剥がすというもの。簡単そうに聞こえるが、きれいに仕上げるコツをつかむまでには試行錯誤を繰り返したそう。
(2018年3月号掲載)
※このページは「ライトハウス・サンディエゴ版 2018年3月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。