資本は、法人にどれだけの価値があるかの指標の一つです。たとえ多くの資産を所持していても、それと同等の負債があれば、資本はほとんどないのです。資本を理解すれば、その法人の本来の価値が分かるようになります。
資本は「資産-負債」という計算式で表され、アメリカではOwner’s Equity、Stockholders’ Equity、Shareholders’ Equity、Corporate Capitalなどと呼ばれます。資本は、資本金(Capital Stock)、株式払込剰余金(Additional Paid in Capital)、利益剰余金(Retained Earnings)の3つで構成されます。
資本金
株式の発行で調達した資金が資本金です。株式には普通株(Common Stock)と優先株(Preferred Stock)があります。一般的に株式とは普通株を指し、普通株を所有することはその会社の一部分を所有していることと同じで、1株に対し1票の議決権が付随します。つまり、株主総会において会社経営陣の選出や承認を行う権利を有するので、運営にも関わることが可能です。新しく株式が発行される前後に株を購入できる「先買権(Preemptive Right)」も与えられます。
それに対し優先株は、利益の配当(Dividend)や残余財産の分配を普通株所有者より優先的に受け取る権利があります。広い範囲から出資者を募るため、決められたレートで普通株と交換できるなど、さまざまな特徴を持った数種類の優先株を発行している会社もあります。しかし、普通株と違い会社の運営に関わる議決権はありません。
また、発行した株式をその会社が買い戻すことがあります。目的は配当やストックオプション用、株価の下落や買収の事前予防などです。株式を買い戻すとは、つまり投資された資本を返却することなので、現金と資本が両方減ることになり、減資と同じ意味となります。この株は資産としても資本としても扱われず、未発行分の株式と同じと見なされます。
株式払込剰余金
株式を額面以上の金額で売却すると、額面との差額が株式払込剰余金となります。例えば、1株10ドルの株式を1万株発行し、投資家が1株20ドルで購入したとします。すると会社は、10万ドル(10ドル×1万株)を普通株の売上、10万ドル((20ドル-10ドル)×1万株)を株式払込余剰金として扱います。
利益剰余金
利益剰余金とは会社設立後の損益を合計したものです。株主への配当金などはここから支払われます。
通常業務で発生した利益は、利益剰余金として翌年に持ち越す場合と、配当として株主へ分配する場合の2通りが考えられます。配当は次の4ついずれかの形態で株主に支払われます。
現金:その名の通り現金による配当。
現物(Property):現金以外のもの(土地、建物、商品など)による配当。
株式:配当金の代わりに会社の持っている株式を提供。
清算(Liquidating):利益剰余金のみならず、会社の資本全てを現金化し、株主の持ち分に合わせて分配すること。法人が解散する際などに行われます。
利益余剰金は業務拡大の資金源なので、会社は翌年への持ち越しを多くするため、配当を少なく抑えたいという心理が働きます。しかし、市場は前年維持、またはそれ以上の配当を求め、もし配当の未払いや減少があれば、その会社は業績不振だと捉えるでしょう。会社にとって、配当の妥当な金額と形態の判断は非常に難しいところです。
(2017年10月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。