税務当局を名乗る者からの突然の電話やE-mail。あたかも税務当局であるかのように作成されたウェブサイト。確定申告のこの時期、そこから派生する詐欺が横行しています。今回はこれらへの対策を紹介します。
電話詐欺
数ある確定申告関連の詐欺の中で被害が一番大きいのは、米国国税庁(Internal Revenue Service:IRS)に成りすました電話詐欺と言われています。この詐欺は、2013年10月から15年1月までに29万件もの問い合わせと、3000件1400万ドルの被害が報告されています。
被害報告は2014年あたりから拡大してきており、お年寄り、米国居住歴の短い人、英語が第1言語でない人といった、弱者をターゲットとするのが特徴です。あたかもIRSであるかのような通知電話番号、そして電話に出ると偽の職員ID番号などをかたり、巧みに納税者を騙そうとします。
この詐欺の手法の大半は、「警察に逮捕される」「国外退去させられる」「ライセンスを剥奪される」などと言って、脅すような発言を繰り返し、納税義務や罰金が発生していると思い込ませて、金銭をだまし取ろうとします。留守番電話につながった場合でも、「緊急(Urgent)に電話を折り返すように」とメッセージを残してきます。
予期しない急な電話に驚いている間に支払い請求をしたり、詐欺師が必要な情報を引き出すという寸法なので注意が必要です。従って、そのような電話を取った場合、その場で対応せずにいったん電話を切り、冷静になってから対応することを心がけましょう。
これ以外にも、還付金を振り込むという理由で個人情報を引き出すものが報告されています。不安が拭えない場合は、IRSや顧問の会計士に問い合わせてみましょう。
フィッシング詐欺
IRSを名乗ったE-mailや、ウェブサイトからの個人情報の盗難に対して、警戒が呼び掛けられています。これらの「フィッシング(Phishing)」と呼ばれる詐欺は、電話詐欺と同じように犯罪者の間で主流となっており、確定申告のこの時期に横行します。
請求書や還付金に関して、IRSが手紙以外で最初のコンタクトを取ることはありません。言い換えると、E-mailやテキスト、ソーシャルメディアは使われません。迷惑メールに張り付けられている、怪しいウェブサイトのURLを不注意にクリックすることは避けましょう。最悪の場合、それだけで電子機器から個人情報を吸い取られてしまうもことあります。
さまざまな手の込んだ手段で納税者を欺こうとする詐欺師に対して、IRSは司法省と協力体制を取って取り締まりを強化しています。このような不法行為に対しては、多額の罰金のみでなく、刑事処分を科される可能性が高くなります。
個人情報の漏えい
納税者に成りすまして確定申告書を提出し、還付金をかすめ取るという、成りすまし詐欺(Identity Theft)も毎年発生します。これは、個人のソーシャルセキュリティー番号を他人が使用することから始まるので、個人情報の管理には気を付けましょう。
「どうやって納税者の個人情報を守るか」という課題に対して、IRSは3000人もの人員を割いています。15年1月14日から6桁のIdentity IPPINという本人の確認番号を税務局のウェブサイトで登録可能です。登録すると、確定申告時にこの番号がパスワードの役割を果たし、個人情報をより厳重に守ることが可能となります。
(2015年2月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。