アメリカでは場所を選ばなければ格安で不動産を購入できますが、一部の人気のある地域では住宅価格の高騰が続いています。「購入」か「賃貸」か、税金面を中心に比べてみましょう。
住宅価格と家賃の比率
アメリカの投資格付け会社、Morningstarの調査(2013年)によると、家賃が物件価格の7%を超える場合は「購入」が有利で、5%を下回る場合は「賃貸」が有利だそうです。
例1:物件Aが20万ドルで売られているとします。それと同じ価値の物件Bの家賃は月800ドルで、年間では9600ドル、物件Cの家賃は月1200ドルで、年間では1万4400ドルだとします。この場合、BはAの4.8%(9600ドル÷20万ドル)、CはAの7.2%(1万4400ドル÷20万ドル)です。したがって、AとBではBを、AとCではAを選択することが得策と考えられます。
税金への影響
家を購入した場合、住宅ローンの利息(Mortgage Interest) や、固定資産税(Property Tax)は確定申告で控除の対象となります。資産を売却する際も、過去5年のうち2年住んだ家であれば、1人につき最大25万ドル、夫婦なら50万ドルの利益まで非課税です。しかし、必ずしも売却時に利益が出るとは限りませんし、住宅ローンの利息や固定資産税は、控除の対象となるだけで実際にお金を生み出すわけではありません。また、場合によっては項目別控除を取れないこともあります。
項目別控除とは
確定申告では、基礎控除か項目別控除を選択できます。基礎控除は国から定められた一定額の控除です。それに対し、項目別控除は医療費、固定資産税、住宅ローンの利子など、特定の項目に対する支出に応じて発生する控除です。基礎控除か項目別控除、どちらか大きい額の方が控除の対象となります。
例2:20万ドルの物件を購入したとします。そのうち4万ドルが頭金で、残りの16万ドルを年利4%で借りた場合、初年度の利息支払いは、6400ドル(16万ドル×4%)です。さらに、固定資産税を4000ドル支払ったとします。この場合、合計1万400ドル(6400ドル+4000ドル)の控除が取れます。しかし、2017年度は1人6350ドル、夫婦合算申告で1万2700ドルの基礎控除が与えられています。1人で申告する場合は項目別控除の1万400ドルの方が基礎控除の6350ドルより大きいですが、夫婦合算申告では項目別控除の1万400ドルが基礎控除の1万2700ドルより小さく、項目別控除を利用する意味がなくなってしまいます。
例3:例2に、医療費5000ドルの控除を加えたとします(医療費の控除は使用額や所得で額が決まります)。この場合、合計1万5400ドルが項目別控除の金額となるので、夫婦合算申告の基礎控除額の1万2700ドルを上回ります。このようになって初めて、支払った住宅ローンの金利や固定資産税が、項目別控除に影響してきます。
住宅購入の持つ意味
住宅購入は、物件の価値以上の意味を持ちます。生活の拠点が限定されるのみでなく、賃貸であれば心配しなくて済んだ修繕費用なども勘定に入れておかなければなりません。しかし、購入後は、家賃の支払いからは解放され、税金面での恩恵を得ることもできます。そして、時期を選べば大きな売却益を手にすることも可能です。実際に手元で動くキャッシュフローだけでなく、それに付随する価値も十分に考えて「購入」か「賃貸」かを決めたいところです。
(2017年11月1日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。