カリフォルニア州の確定申告では、アメリカの会社による海外事業や日本からの投資家によるアメリカでの事業について、全世界所得の申告が必須です。企業によってはウォーターズエッジを選択すると良いでしょう。
合算課税(Unitary Tax)
アメリカでは各州が独自の課税権を持っているので、「企業が州外や海外で事業を行った場合、どこで課税されるのか? 」という問題が発生します。それを解決するため、カリフォルニア州で採用しているのが合算課税方式です。法律上は別企業でも、親子・兄弟企業などの場合は単一のグループで事業を行っているとみなされ、関連企業全ての所得を合算して確定申告書の作成をします。しかし、他州でも合算課税方式を採用している場合、二重課税される可能性が出てきます。そこで、各州で発生した売上・給与、保有する資産を合算して所得を算出した後、各州における所得の割合を基に納税します。
ウォーターズエッジ(Water’s Edge)
カリフォルニア州は全世界所得を課税対象とするので、海外の関連企業も合算所得に含めなければなりません。カリフォルニア州では海外に関連企業を持つ企業に、確定申告で「ウォーターズエッジ」という選択肢を与えています。これを選ぶと、アメリカ国外の所得を含める必要はなくなります。例えば、東京、ロサンゼルス、ニューヨークに関連企業がある場合、所得計算の際にロサンゼルスとニューヨークのことだけを考えればよいのです。アメリカ国内の収入が少ない場合、節税につながる可能性が出てきます。
また、海外の関連企業の所得を確定申告に含めなくて良いので、その分の記録や管理が簡単になり、そこにかかる費用も節約できます。
確定申告でウォーターズエッジを申請する方法は以下の通りです。
①ウォーターズエッジ用の計算式で課税所得を計算する。
②法人税申告は「Form100W」を使用する。
③申請年度の「Form 100W」に「Form 100-WE」を添付する。
更新と解除
ウォーターズエッジの更新に特別な作業は必要なく、「Form 100W」を使い続けることで自動更新されます。しかし、一度申請すると申請後7年間はウォーターズエッジとして確定申告を行わなければならず、基本的に途中で選択を取り消すことはできません。
申請から7年目以降の法人税申告で「Form 100」を使用すればウォーターズエッジは自動的に解除されます。しかし、一度ウォーターズエッジを解除してしまったら、再申請には最低7年間待たなければなりません。
仮に7年以内に解除、もしくは解除後に再申請を行いたい場合は書面において正当な理由(連結納税をやめるなど)を説明し、カリフォルニア州の税務当局から認可を得る必要があります。
解除は翌年の確定申告から有効で、申請した年はウォーターズエッジとして確定申告をしなければなりません。再申請の場合は、その年から適用可能です。いずれの申請も、税務当局から認可が下りる前であればいつでも取り消せます。
カリフォルニア州では、ウォーターズエッジを選択しなければ、海外の関連企業と合算した所得で確定申告をしなければなりません。しかし、このようルールがあるにもかかわらず、正しい選択をしていない企業が見受けられます。正しい選択を行わないと、所得隠蔽とみなされ追徴金を課される可能性もあるので、心当たりのある方は専門家と見直してみましょう。
(2017年11月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。