日本で最近導入された「マイナンバー制度」。多くの国が類似制度を導入していますが、米国ではその情報流出や、個人情報を盗む「なりすまし犯罪」が大きな問題になっています。
米国全体で年500億ドルの被害
ロサンゼルスに住む、低所得で確定申告書提出義務のない方に「申告義務のある所得が報告されていない」と連絡が届きました。その方は全く身に覚えがなかったので調査を依頼したところ、アーカンソー州で他人が自分のソーシャルセキュリティーナンバー(SSN)を使って収入を得ていたことが分かりました。このケースは税務当局が発行する警告サイトに掲載されていた内容の一部ですが、このように、自分の知らないところで納税義務を負わされる事件が頻発しています。
上記のケースのように、個人情報を盗まれると、税金や口座情報の漏えいなど、大小さまざまな問題に直面することになります。
税務当局によると、なりすまし犯罪の被害額は米国全体で年平均500億ドルと推計され、「自分こそがこの番号の保有者である」という正当性の証明など、後処理に費用と時間がかかり、被害者は処理代として平均354ドルの支払いと、問題解決に12時間前後の時間を費やしているそうです。
なりすまし犯罪の種類
犯罪者は、財布やかばんを盗んだり、ゴミ箱をあさったり、コンピューターのハッキングや企業情報の不正入手を行ったりと、常に個人情報を盗む機会をうかがっています。
一方で、税務当局になりすまし、個人情報の公開を求めるEメールやテキストメッセージを送ってくることもあります。IRSやFTBなど税金を扱う機関が、Eメールやテキストメッセージで個人情報の公開を求めることは原則的にありません。しかし、犯罪者の手口は非常に巧妙で、被害者が税務当局に確定申告書を提出するまで気付かないケースも少なくありません。
そのため、次のような通知が送られてきた場合、なりすまし犯罪の可能性が高いので専門家の助けを求めることをお勧めします。
①重複した確定申告が提出されている
②確定申告を作成していないはずの年に還付や納税義務がある
③見知らぬ雇用主からの収入が税務当局側に記録されている
自己防衛手段
IRSは、なりすまし犯罪からの自己防衛手段として、下記のような方法を推奨しています。
①ソーシャルセキュリティーカードやSSNが表記されている書類を持ち歩かない
②雇用時など、必要時以外、SSNを会社に渡さない
③銀行の取引明細書などファイナンシャルインフォメーションを保護する
④クレジットレポートを毎年確認する
⑤個人情報は家に保管する
⑥セキュリティーソフトで自分のパソコンを保護する
⑦相手の素性を確認する前に電話や郵便、Eメールで個人情報を流さない
まずは、こうした対策で身を守ることが先決ですが、個人情報の不正取得を試みるEメールが届いた場合は、IRS(phishing@irs.gov) に転送し、 IRSからの手紙でなりすまし犯罪の被害の可能性があると分かった場合は、直ちに手紙に書かれている宛先へ連絡するよう、IRSは呼びかけています。
他にもIRSのホームページに有益な情報が載っているので、興味のある方はIRS Theft Resource Pageを検索してみてください。
(2016年3月1日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。