アメリカの税金・会計疑問にお答えします 2026年(最新)

タックスリターン2025

税法上の居住者の判定 │ チップは非課税 │ デジタル資産の報告義務 │ 日本の収入の報告 │ 「Form 1040」2025年度の改定 │ IRSの小切手での還付廃止へ │ 

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税法上の居住者の判定

確定申告での、居住者と非居住者の判定基準や違いを教えてください。
(CA版2026年3月号掲載)

税法上、居住者(Resident)か非居住者(Nonresident)かを分けることは大切です。この判定はIRS(内国歳入庁)が定めたルールに基づいて行われます。居住者は、アメリカだけでなく世界中の収入全てが課税対象になります。非居住者は、アメリカで得た収入のみに課税され、日本や他の国での収入は課税されません。

183日が分かれ目

グリーンカード保持者は、自動的に税法上の居住者です。仮にアメリカに1日しか滞在していなくても、グリーンカードを持っていればアメリカ居住者として世界中の収入を報告する必要があります。

グリーンカードを持っていない人は、通常、「183日ルール」で居住者かどうかを判定します。その年に183日以上アメリカに滞在していれば居住者、183日より少なければ非居住者です。ただし、183日より少なく滞在していても、その前年とその前前年の日数によっては居住者になるケースもあります。仮に、アメリカで150日、日本で100日働いても、アメリカの居住日数が183日を超えれば居住者として全世界の収入を申告する必要があります。

実務上は日数の記録を正確につけることが重要で、パスポートの「I-94」やフライト情報が証拠になります。居住者と非居住者では申告書の種類や利用できる控除が異なり、どちらのステータスになるかで税率や納税額の負担が大きく変わります。また、183日を超えて滞在していても「生活の拠点」が外国にあると証明できれば非居住者になる場合があります。

183日ルールの例外

183日ルールには、いくつかの例外があります。J・Qビザで滞在している教師・研修生や、F・J・M・Qビザで滞在している学生は、渡米年から一定期間は183日ルールの対象外です。A・Gビザで滞在している外国政府関係者も183日ルールの対象外です。ただし、A-3や G-5のビザは対象外で、この例外は適用されません。

また、カナダかメキシコ在住で通勤のためにアメリカへ出入りした、米国外への移動途中で滞在が24時間未満だった、外国船舶の乗組員としてアメリカに滞在した、アメリカ滞在中に発症した病気やけがで出国できなかった日は滞在日数に含めません。

報告の方法と課税対象

居住者は「Form 1040」で世界中の収入を報告します。各種税額控除(Tax Credit)や標準控除(Standard Deduction)を使える利点はありますが、手続き業務の負担が大きくなります。非居住者は「Form 1040-NR」でアメリカの収入だけを報告します。控除はあまり使えませんが、租税条約で有利になることもあります。

滞在日数の間違いは申告内容に影響が出るので、正しく管理しましょう。

チップは非課税

チップや残業代が非課税になると聞きました。詳しく教えてください。
(CA版2026年3月号掲載)

2025年から28年にかけ、チップ収入ならびに残業代の一部を控除できる新制度が導入されました。チップは年間最大2万5000ドルまで控除が認められ、所得水準に応じて段階的に減少します。控除額の報告と計算方法はいくつかあり、「Form W-2」のBox7か14、「Form 4070」、「Form 4137」などを利用できます。個人事業主は、「Form 1099」に内訳が記載されていない場合でも、POSレポートや日次記録などの裏付け資料があれば控除計算が可能です。

一方、残業代の控除は「時間外割増部分」が対象で、年間最大1万2500ドル(夫婦合算は2万5000ドル)まで控除できます。給与明細に割増賃金が区分されていなくても、IRSは簡易計算を認めています。また、消防士、公務員、医療従事者など一部の業種には特別なルール設定があります。

25年は「W-2」や「Form 1099」に特別な表示がないため、納税者自身が必要な情報を整理し、控除額を正しく算定する必要があるので注意してください。

デジタル資産の報告義務

デジタル資産を所有している場合、IRSに報告する必要がありますか?
(CA版2026年2月号掲載)

暗号資産(Cryptocurrency)、ステーブルコイン、NFTやメタバース資産などのデジタル資産はアメリカでは資本的資産として課税対象となり、個人も法人も取引で得た利益はキャピタルゲイン所得として報告が必要です。

新しいフォーム

IRS(内国歳入庁)は「Form 1099-DA(Digital Asset Proceeds From Broker Transactions)」の指針について2025年に発表しました。このフォームはブローカーが顧客のデジタル資産取引に関する情報をIRSへ報告するもので、25年中に行われた取引内容を元に、26年2月17日までに顧客(納税者)に提供する予定です。

「Form 1099-DA」は、通常の証券報告書と異なり、取得価格(Cost Basis)が含まれない場合が多い点に注意が必要です。

また、「Form 1099-DA」は主に個人納税者向けに発行されますが、法人であっても、取引形態や契約内容によっては対象となる場合があります。

自身の管理が重要

ブローカー側にIRSへの報告の義務はありません。しかし、納税者自身の申告義務がなくなるわけではありません。つまり、法人も含め、デジタル資産の売却や交換で収益が生じた場合、帳簿管理と取得価格の記録が不可欠です。そのため、帳簿上の裏付けや証しょうひょう憑の保管、取引明細の記録は引き続き必要です。複数の取引所やウォレットを利用している方は、早めにデータを整理し、取引履歴や正確な価格を一元的に把握できる体制を整えておきましょう。

日本の収入の報告

日本の年金や生命保険金の受け取りはIRSに申告すべきですか?
(CA版2026年2月号掲載)

日本の年金や生命保険金を受け取ったら、IRSに報告しなければならないのか?は、なかなか分かりにくいテーマです。今回は申告方法、税金の計算、二重課税の回避という三つのポイントから整理してみましょう。

所得の報告

アメリカでは、海外で得た収入や資産もIRSに報告する義務があります。日本での所得も報告対象になります。日本の年金や生命保険から収入を得てアメリカで受け取る人は、タックスリターンで、「Form 1040」に記載する必要があります。また、日本の銀行口座や生命保険の貯蓄が一定額を超える場合は、FBARやFATCAという追加報告書を出すことも求められます。知らずに報告しないと、思わぬペナルティーを受ける可能性もあるので注意が必要です。

税金の計算

日本の年金や生命保険による収入は、必ずしも全額が課税対象になるわけではありません。元本は自分のお金が戻ってくるだけなので課税されません。課税対象は年金や生命保険で追加に増えた額だけです。元本ではなく、利益部分だけが所得として扱われます。

二重課税の回避

二重課税を回避する上で最優先されるのは日米租税条約(Japan-U.S. Tax Treaty)です。租税条約に基づき、対象となる所得はどちらの国が課税権を持つのか、またはどちらが優先かを判断します。次に、条約の規定に従って課税関係を整理します。条約上、日本で課税されるべき所得は日本で税金を支払い、アメリカ側では課税されないか、金額が調整されます。

課税権は、まず条約によって決まるという点が重要です。その上で、条約の適用後もなお日米双方で課税が生じ、二重課税となる部分が残る場合には、調整手段としてFTC(Foreign TaxCredit/外国税控除)を利用します。FTCは課税権を決める制度ではなく、条約や国内法の結果として生じる二重課税を解消・軽減するための制度です。なお、条約の適用を主張してアメリカでの課税を免除または軽減する際には、場合によって「Form 8833」の提出が求められますが、全ての場合で必須というわけではありません。

「Form 1040」2025年度の改定

2025年度の個人の確定申告での変更点を教えてください。
(CA版2026年1月号掲載)

IRS(内国歳入庁)は、2025年課税年度より「Form 1040」(個人の所得税申告書)を大幅に改訂しました。主な変更点をご紹介します。

状況をより正確に報告

まず、納税者の状況をより正確に把握するためのチェック項目が増えました。例えば、納税者が戦闘地域に滞在しているか、申告が自動延長の規定(Treasury Regulations §301.9100-2)に基づいて行われているか、または納税者や配偶者が年の半分以上をアメリカ国内に居住していたかどうかなどを確認する欄が新設されています。さらに、納税者または配偶者が亡くなっている場合にそれを明示する項目も設けられました。

扶養家族に関しても、より詳細に把握するための欄が追加されています。扶養家族が納税者と半年以上同居していたか、アメリカ国内に半年以上居住していたか、フルタイムの学生であるか、あるいは恒久的な障害を有しているかなどをチェックする形式です。既存の子ども税額控除やその他の扶養家族控除に関する確認欄も引き続き設けられています。これにより、IRSが扶養家族の要件をより明確に判定できるようになります。

年金とIRA分配で新項目

また、年金やIRAの分配に関しても新しい確認項目が追加されました。分配がロールオーバーであるか、慈善寄付であるか、または特定の年金給付に該当するかなどに加え、申告者が聖職者であり「Schedule SE」を提出しているかどうか、そしてIRA控除や追加子ども税額控除をあえて申請しない選択をしているか否かを示す欄が設けられています。これらの情報は、税務当局が申告内容を自動判定する際の重要な判断材料となります。

さらに、社会保障給付に関して、「Line 6d」が新設されました。ここでは、納税者が夫婦別申告であり、年間を通じて配偶者と別居していたかどうかを確認する項目が追加されています。この項目は、社会保障給付の課税対象額に直接関係する重要なポイントです。夫婦別申告で年間を通じて別居していた場合、課税基準額は0ドルとなり、最大で85%の給付金が課税対象となる場合があります。

その他、フォーム内の構成も一部変更されました。24年版ではページ1の上部にあった「配偶者が別申告で項目別控除を行っているか」「納税者が二重ステータス(Dual-Status Alien)か」を確認する欄が、25年版ではページ2に移動し、それぞれ独立したチェックボックスに分けられています。また、新設の「Schedule 1-A」で集計されるOBBBA法関連の控除に対応する行も追加されています。

今回の改訂は、申告内容をより早く正確に処理するためのステップといえます。従来のフォームに慣れている方は、早めに新しい様式を確認しておくと安心です。

IRSの小切手での還付廃止へ

小切手での還付金の受け取りができなくなるというのは本当ですか?
(CA版2026年1月号掲載)

IRSは、個人納税者への紙の税還付小切手を段階的に廃止し、電子的な還付方法へ移行すると発表しました。25年9月30日以降、還付金は原則として銀行口座への直接入金(ダイレクトデポジット)またはデビットカード・デジタルウォレットなどの電子手段で支払われる予定です。

IRSは、紙の小切手は紛失・盗難・改ざん・郵送遅延のリスクが高く、処理コストも大きいため、電子化によってより安全かつ迅速な還付を実現できると説明しています。行政効率化を目的とした大統領令(Executive Order 14247)に基づき、段階的な移行が進められます。

今後、紙の小切手による還付を希望しても対応できない場合があるため、銀行口座をお持ちでない方は早めに口座開設をご検討ください。すでに口座をお持ちの方は、申告時に口座番号とルーティング番号を正確に入力することが大切です。電子還付の準備を早めに整えておきましょう。

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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