アメリカに来て仕事がしてみたいけれど、アメリカでの職務経験もないし、英語はまだ勉強中。そこで、「J-1(Exchange Visitors)」ビザを取得して渡米したという方も読者の皆さんの中にはいらっしゃるのではないでしょうか。「J-1」ビザは学生、研修生、研究者に対して発行されます。今回は、「J-1ビザ」保持者個人の連邦税(IRS)の確定申告について解説します。
確定申告期限と延長
個人の確定申告は暦年課税、つまり1月1日から12月31日までの所得や控除を集計して申告します。申告期限は翌年の4月15日ですので、2014年度の確定申告は15年4月15日までに提出する必要があります。
ただし、もしも間に合わない場合は申告延長の申請が可能です。申請が認可されれば、締め切りが6カ月間延長されるので、14年の確定申告の締め切りは15年10月15日になります。4月15日の時点で既に日本に帰国済みの方は、自動的に2カ月間の延長が認められていますが、延長申請することで10月15日までの延長が認められます。
申告期限の延長は可能ですが、納税義務を先延ばしすることはできません。従って、本来の申告期限までに納税額が確定しない場合は、予め見積もった金額を4月15日までに納税しなければなりません。期限後に追加納税分を支払った場合には、その金額に対して罰金、利息がかかります。
確定申告ステータスと申告書
「J-1」ビザでアメリカに居住している際、税法上では非居住者とみなされますので、「J-1」ビザ保持者の確定申告書におけるステータスは、例外を除き、非居住者(Non-Resident)となります。
申告書は「Form 1040 NR」を使用します。アメリカでは申告書の電子申告が一般的ですが、「Form 1040 NR」は電子申告が認められていないため、原本を郵送する必要があります。
申告する所得の範囲
非居住者が申告するのは、アメリカで稼いだ所得だけです。渡米前に日本で得た給与や日本の不動産所得などに関しては申告義務がありません。しかし、米国の銀行に預金口座などを持つ場合、その利息は申告対象になります。利息が発生した際は、「Form 1099-INT」が銀行から送付されて来ますので、それを基に申告書に記載します。
申告要件
「J-1」ビザ保持者は、研修を受けている会社からもらう給与に対して「W-2」が年度明けに送られてくると思います。申告所得が給与のみの場合、3950ドル以下(14年の場合)であれば、確定申告書を提出する必要はありません。
例えば、11月から12月にかけて研修生として渡米された方は所得が3950ドル以下になるケースが多く、その場合は申告書を提出する必要がありません。ただし、自主的に申告することは可能で、申告すると小額ですが税金が戻ってくることが多いです。こういった場合には、会計事務所に確定申告の代行を依頼すると手数料の方が高くなることもあるので、申告書を提出しない方が得策でしょう。
控除の範囲
非居住者は基礎控除(Standard deduction、14年は6200ドル)を使うことができず、項目別控除(Itemized deduction)しか選択できません。また、米国居住者には認められている医療費控除や支払利息控除などを使うことができず、既婚でも夫婦個別申告しか選択することができません。また、人的控除(Personal exemption)も本人分しか取得できず、居住者と比べて税金面で損をすることも多々あります。
(2014年6月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。