幅広いコミュニケーション力をつける

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船津 徹(TLC for Kids代表)

「大人の話に口を出さないの!」「子どもはあっちで遊んでいなさい!」親子で集まる時、大人は大人、子どもは子どもと分けるものだと思っていませんか?親戚の集まりで、子どもが大人の話に聞き耳を立てていると「あっちに行っていなさい!」なんて追い払った経験はありませんか?
 
子どもは大人の話に興味津々です。でも大人側が子どもに聞かれたくなかったり、子どもには分からない話題だろうと思ったりして、大人とコミュニケーションを取る機会を奪ってしまうことがあります。子どものコミュニケーション力を向上させるには、同年代の仲間だけでなく、幅広い年齢の人たちと対話する機会を与えることが大切です。

子どもとの対話を重視する

コミュニケーション力の育成を重視するアメリカ人は、大人が意図的に子どもと会話をする機会を持ちます。誕生日パーティーなどで、大人が子どもに混ざって会話を楽しんでいる光景がよく見られます。子どもを一人前扱いして話をすることで、自立を促そうという気持ちがあるのです。
 
「こんにちはザックさん。最近サッカーの調子はどうですか?」と、まるで大人と接するように子どもに声を掛けます。すると、子どもは一人前扱いされてうれしくなり、自分も大人らしい会話をしようと言葉遣いを意識するようになります。
 
「まあまあです。先日の試合は残念ながら負けてしまいましたが。リチャードおじさんはゴルフの腕前は上がりましたか?」なんて会話が、大人と子どもの間で日常的に行なわれています。
 
個人主義が浸透しているアメリカでは、相手が子どもでも一人の人格として尊重して接します。一人前扱いしてあげることで、子どもの自立心に火が付くことをよく知っているのです。

対等な一人の人間として接する

「子どもはあっちに行っていなさい!」なんて軽く扱わずに、何歳であっても自分と対等の一人の人間として敬意を持って接してください。特に母親は子どもを、子ども扱いしがちなので注意しましょう!多くの親が子どもを自分の分身や所有物と考えているのです。だから命令・禁止言葉を平気で使います。もし相手が他人の子だったら「ああしなさい!」「ダメ!」と頭ごなしに命令することはないはずです。
 
命令・禁止言葉で子どもをコントロールしようとしてもうまくいきません。子どもを動かす時は、大人と接するように「悪いけど」「すまないけど」と一言添えて頼めばいいのです。そして子どもがしてくれたら必ず「ありがとう」と感謝を伝えます。一人前の人格として尊重することで、子どもの自立心が育ちます。

地域活動に子どもを参加させる

最近の子どもは、気の合う限られた集団の中でしかコミュニケーションを取らない傾向があります。興味、関心、世代の違いを越えてコミュニケーションを取ることを苦手と感じ、幅広い人たちとの交流を避けようとします。
 
もっと大人の活動に子どもを参加させましょう。アメリカでは大人の集会やボランティア活動に子どもが参加することは大歓迎です。公園のゴミ拾い、花壇の世話、学校の手伝いなどに子どもを連れていき、大人と関わる機会を作ってあげるのです。
 
子どもが手伝いをしていると、たくさんの大人が声を掛けてくれます。「◯◯君がんばっているね!」「◯◯ちゃんは偉いね!」そんな大人との対話が子どもの自立心を育て、自信を大きくしてくれます。
 
学校、地域、習い事などのボランティアやファンドレイザーに親が積極的に関わり、子どもを同伴しましょう。親子で地域の人と交流を深める機会を持つことで、親も子も、アメリカ社会を深く理解できると同時に、豊かなコミュニケーションスキルを身に付けることができます。
 
(2016年11月1日号掲載)

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