海外での子育てでは子どもの自信を育てることが大切です。自分の意思とは無関係に異文化への適応を余儀なくされる子どもは、親が想像する以上に多くのストレス、戸惑い、不安に直面します。慣れ親しんだ言葉や習慣が通用しない集団社会(現地校)に入るとき、誰でも多かれ少なかれ劣等感を覚えたり、自信喪失を経験します。
このとき、子どもの学校適応を左右するのが「自信」です。自信が大きく育っている子は、新しい環境への不安や恐怖よりも「自分はやればできる」という気持ちが勝っているので、困難に立ち向かっていくことができます。その結果、英語力も人間関係も積極的に身に付け、自分らしさを保ちながら新しい環境へ適応していくことができるのです。
一方、自信のない子は「自分はどうせできない」という気持ちが根底にあるため、ストレス、不快といったマイナスの刺激を恐れ、避けるようになります。すると、何事にも消極的で、友だちがなかなかできず、英語力が伸び悩み、学力が停滞し、さらに自信が減退するという悪循環に陥ってしまいます。
根拠のない自信を育てる
子どもの自信の源は「根拠のない自信」です。勉強や課外活動など、自分の努力によって自信をつけていくのは先の話。根拠のない自信というのは「ボクはママから愛されている」「私は親から必要とされている」という自信であり「自分は価値がある人間だ」と心から信じている状態です。
人間にとって最も大切な資質である「やる気」の大小も「根拠のない自信」が関わっています。「困ったときにはママが助けてくれる」「いつもママはボクの味方だ」という安心感が根底にあれば、失敗を怖がらない積極的な性格に育ちます。反対に「誰も助けてくれない」「世の中は敵ばかりだ」という不安感が根底にあると、臆病で消極的な反面、他人には警戒的、攻撃的な性格になります。
「根拠のない自信」を育てるには、親から愛されていると子どもが「実感」していなければなりません。もちろん大抵の親は我が子を心から愛していると「思っている」でしょう。しかし、多くの子どもは親から愛され受け入れられていると「実感」できていないのです。この愛情のすれ違いが多くの子どもに自信と積極性が育たない最大の原因です。
自信を育てるコツは「お手伝い」
子どもに愛情の「実感」を与える一番の方法が「お手伝い」です。簡単なお手伝いを頼み、できたら「手伝ってくれて助かったわ、ありがとう」と言い、ギュッと抱きしめて感謝するのです。子どもはお母さんの胸に抱かれ感謝されたことで「自分は愛され、必要とされている」という「実感」を得ることができます。
子育て上手なお母さんは、子どもに頻繁にお手伝いを頼み、愛情のインプットをせっせと積み上げています。人から感謝される喜びと快感をたくさん経験して育った子どもは、前向きで積極的、そして開放的な人柄になります。
子どもが2、3歳でもどんどんお手伝いを頼みましょう。ただ、命令や指図で子どもを動かそうとしてはいけません。ささいなことでも必ず「頼むこと」から始めてください。「○○ちゃん、悪いけどママを手伝ってね」。そして、子どもがしてくれたら「ありがとう、助かったわ」と抱きしめて感謝する。これで子どもは自分の働きがママに必要だ、自分は役に立つ人間だという「実感」を得ることができます。コツはスキンシップを加えること。言葉で感謝するよりも100倍愛情が伝わります。
勉強以外の特技を持たせる
根拠のない自信を育てることは小学生以上の子どもにも効果がありますのでぜひ実践してください。同時に、小学校高学年からは、根拠のある自信作りにも配慮しましょう。バイリンガルの子どもは、英語力でハンディがありますから、学力面でトップに立つには長い時間と努力が必要です。そこで両親が目を向けるべきは「勉強以外の特技」を持たせることです。
スポーツ、音楽、絵画、演劇、どんな分野でも、どんなに小さなことでも構いませんので、子どもが好きなこと、得意なことに集中的に取り組ませ、特技へとレベルアップさせるのです。マンガを描けば人には絶対に負けない、ギターを弾けば自分が一番だ、卓球なら誰にも負けない、そんな特技が一つあるだけで、子どもの自信は倍増します。その自信が源泉となって、学業にも課外活動にも対人関係にも積極的に取り組める資質が育つのです。
(2014年10月1日号掲載)