アメリカの学校教育への馴染みがなく、また、英語が苦手な日本人父兄は子どもの勉強を学校任せにする傾向があります。「現地校に通わせておけば勉強は何とかなるだろう」と考えるのは危険です。子どもが、自分の努力だけで英語力と学力を身に付けていくことは困難です。
アメリカの小学校には教科書がないため、両親には授業の内容が知りづらく、子どもに「何を勉強しているの?」と聞いても要領を得ないことがほとんどです。だからといって家庭で何のサポートも与えなければ、子どもは勉強で消化不良を起こすようになります。
子どもの学びをサポートするには、両親が担任の先生とコミュニケーションを取ることが必要です。アメリカの学校は、先生によって指導内容や進め方に違いがありますから、直接尋ねなければ具体的な授業内容は分からないのです。先生との関係が深まるほど、より適切な指導が期待できるようになります。
子どものことを知ってもらう
先生との関係を築く最初の機会はカンファレンス(個別面談)です。どの学校にも先生との個別面談があります。このときに子どもについて詳しく説明してください。アメリカ滞在年数、英語歴、兄弟姉妹、家庭の言語環境、性格、課外活動などについて伝え、先生に我が子のことをよく知ってもらうのです。
その上で、各教科のカリキュラムと目標、宿題の量や課題のタイミングなど具体的な授業内容について質問しましょう。先生との連携を強め、子どもの学びを家庭でもサポートしたいという気持ちを表明することによって、先生は親身になって子どもの学習活動を支えてくれるようになります。
子どもがELL(EnglishLanguageLearners)プログラムに入っている場合、担任の先生に加えて、ELLの先生とも面談をしてください。面談では英語の四技能(聞く、話す、読む、書く)について、子どもの現在のレベルと目標を確認しましょう。子どもが何で苦労しているのか、それを家庭でどうサポートしたらいいのか、アドバイスを受けてください。
ボランティアで信頼関係を深める
先生と友好な関係を築く第二のステップが、学校ボランティアです。先生も人の子ですから、協力的な家庭の子どもには目をかけたくなるものです。初めて学校ボランティアに参加するときは勇気がいりますが、子どものためですから思い切って行動してください。
学校ボランティアには、PTA役員やクラスマザーとしてボランティアを統括するリーダー的活動、登下校や放課後に子どもの安全をモニターする活動、フィールドトリップの付き添い、プリントの製作やコピー、貸し出し図書の整理や補修、イベントの準備や片付け、生徒のスナックや飲み物の用意、授業中の先生補佐など、多くの労力を要するものから単発のものまでさまざまです。
また、季節の行事やイベント時の写真やビデオ撮影、広報物の作成や配布、ウェブサイトの制作や管理、スポーツ・楽器・ダンス指導、日本の行事・文化紹介など、自分の専門や特技を活かせる分野でボランティアをすることもできます。
ボランティアを始めるよいきっかけが、カンファレンスやオープンハウスです。先生にどんなボランティアが求められているのかを聞いてみましょう。英語が得意でなくても手伝える仕事はいくらでもあるはずです。
英語ができなくても大丈夫!
子どもが学校でどんな様子なのか、どの子と仲がよいのか、クラスメートはどんな雰囲気なのか、先生はどんな人柄なのか、アメリカの学校はどんな授業をしているのか、などを自分の目で見ることができる学校ボランティアは、日本人の両親にとって貴重な体験です。
英語力に不安があるのは子どもも一緒。両親が学校ボランティアに参加することで、異文化に放り込まれた子どもが、どのような気持ちで学校生活を送っているのか、子どもの心情をより理解できるようになります。これはバイリンガル育児を実践する両親にとって、極めて重要なことです。
アメリカの学校は、英語が苦手という父兄でも、子どもの学びをサポートしたいという気持ちがあれば、温かく迎えてくれます。まずは担任の先生に相談してみましょう。両親が学校に参加することで、先生や他の父兄たちと協力して子どもをサポートする体制を整えることができます。また人間関係の広がりと共に、英語を練習する機会が増えるのもボランティア参加の副産物です。