バイリンガル子育てで見落としがちなのが「英語の読み書きの力」です。英会話力はアメリカの学校に通えばどの子も自然に身に付けられますが、読み書きの力は系統的な指導を受けなければ身に付きません。もちろん現地校で英語の読み書きを教えてもらえますが、バイリンガルの子どもが、学校の授業だけで読み書きをマスターすることは簡単ではありません。近年、日本に移民してきたブラジル人やペルー人家庭の子どもが、日本の学校に通っても日本語の読み書きが身に付かず、授業に付いていけないことが大きな問題となっています。家庭でポルトガル語やスペイン語を話す子どもの多くは、日本語の日常会話はできるようになっても、授業で要求されるレベルの読み書きを習得できずに苦労しています。アメリカの学校に通う日本人の子どもも、日本で暮らす移民の子どもたちと置かれている状況に大きな違いはありません。このことを親が認識せず、読み書きを学校任せにしていると、英語力は伸び悩み、子どもが授業で困難を感じるようになります。バイリンガルの子どもが読み書きを定着させていくには、学校の指導に加えて、家庭におけるサポートが不可欠です。
フォニックスを家庭でサポートする
「子どもにおかしな発音を教えたくない。だから読み書きは学校に任せよう」と、多くの父兄は家庭で英語を教えることをためらいます。確かに、英語の読み書きの入り口である「フォニックス」を指導するには、英語の文字を正しく発音できるネイティブレベルの英語力が必要と思われがちです。実際には、英会話力が育っている子どもに対しては、親が文字を教えても何ら問題はありません。英会話ができる子は、正しい英語の音と親の発音を区別できるので、親の発音がうつる心配はありません。簡単な英会話ができるようになったら、家庭でフォニックスのワークブックに取り組みましょう。家庭でコツコツと文字の練習を繰り返すことで、読み書きの力は定着します。一方、英会話力が育っていない子どもに親が文字を教えることは勧められません。英語の正しい音が識別できない子どもに間違った発音を与えると、親の発音が子どもにうつることがあります。アメリカに来て間もない、会話力がまだ育っていない子どもには、ネイティブのチューターやフォニックス指導ができる塾のサポートを得るようにしましょう。
読書教育を家庭でサポートする
フォニックスを覚えると、子どもは簡単な文章が読めるようになります。本が読めるようになった子には、1日30分の読書を日課にしてください。大抵の学校には推薦図書のリストがありますので、子どもの興味やレベルに合った本を選んで読ませましょう。本がすらすら読めるようになれば、読書量に比例して英語力もグングン伸びます。子どもは読書によって単語力、文法力、読解力など、英語上達に必要なスキルを鍛えることができます。バイリンガルの子どもが高度な英語力を身に付けるには、多読を通して語彙を増やすほかに近道はありません。子どもが自主的な「読書習慣」を身に付けるまで、両親は家庭でのサポートを継続しましょう。学校から英語力について指摘がないからと、読書教育を怠ってはいけません。バイリンガルの子どもは、成績に問題がなくても、総合的な英語力はネイティブよりも必ず劣ります。両親は図書館や書店に子どもと一緒に行き、英語の本と親しむ機会を多く作ることを心がけてください。
幅広い分野の読書へと導く
「子どもは読書好きですが、読解力やボキャブラリーが弱い」という相談を受けます。そのような子は「偏った読書」をしています。新しい語彙を獲得するには幅広い分野の読書が必要です。小学3~4年生以降は自然科学や科学技術、政治、経済に関連する本のほか、歴史や伝記の本など多様な分野の本に興味が持てるように導いてください。また、読書に慣れてくると「飛ばし読み」をするようになるので注意してください。知らない単語があっても文脈から何となく意味がわかるので辞書で調べるのが面倒くさくなるのです。未知の単語と出会った時は、目印を付けておき、後で意味を調べるように指導してください。クリティカルリーディングが重視される欧米の学校教育では正確な語彙理解が強く求められます。
(2013年9月1日号掲載)