(2024年10月号掲載)
令和のコメ不足
原因はどこにあるのか
この夏、日本ではコメ不足が問題になった。長い間、日本ではコメは余っていた。食文化の欧米化が進み、麺類やパンによる小麦の消費が増え、反対にコメの消費が減っていったからだ。その一方で、日米の間では日本の貿易黒字が問題になり、アメリカから日本へはコメの輸入を拡大するような要請が続いた。とにかくコメの過剰在庫は大きな問題であり、農水省は「減反政策」といって、コメ作りを止めると補助金を出し続けたのである。
それが、ここへ来て全く反対の動きとなっている。コメの収穫は秋なので、夏の終わりは前年度の収穫を食べ尽くす時期となる。今年の場合は、まさにこの時点でコメが足りなくなった。首都圏などではスーパーの店頭からコメが消えたり、一家族一袋限りという限定販売がされたりした。また、比較的コメの流通量が多い県には、買い出し客が殺到しているというし、農家には今年の新米を予約しようと問い合わせが増えているという報道もある。
原因としては、とりあえず昨年が猛暑のためコメの収穫が不良だったということと、外国人観光客が大量のコメを消費したからという説明がされている。だが、昨年以上の猛暑である今年のコメは順調だそうであるし、外国人は寿司は食べても朝昼晩続けて米は食べないのでその影響も限定的と思われる。確かに、ブランド米の輸出を強化しているのは事実だが、それよりもコメ不足の本当の原因は、高齢農家の後継者不足により耕作放棄が加速している問題が非常に大きい。
耕作放棄の原因としては高齢化だけでなく、鳥獣被害の深刻化なども挙げられているが、要するに農業地帯での人と自然の力関係が逆転しつつあるのだ。ここに至った原因だが、高齢の小規模兼業農家が頑張っていたために、その利害を守ることばかりが国の政策となり、その結果として農業経営の改革が遅れたことが指摘できる。
国内外の需要を見据え
生産方法の転換を
しかしながら、済んだことを批判しても何も生まれない。今回は、これから日本のコメはどうなっていくのかを考えてみたい。増えていく耕作放棄地をまとめて、大規模なコメづくりを展開するということが何よりも必要だ。問題はノウハウであり、機械化の進め方をはじめ日本には大規模なコメづくりの技術や経験は乏しい。この点に関しては、カリフォルニア米のファームが技術指導を兼ねて茨城県に進出したケースが期待できる。すでに「コシヒカリ」から収穫量を15%増しとした改良品種を使って、味の優れた短粒米を生産して、世界へ輸出を始めている。
この動きと並行して、世界では短粒米の流通については、やや小さめの一袋5キロ(11ポンド)の単位が定着しつつある。そこに、この茨城のコメだけでなく、日本発のさまざまなブランド米も追随して世界中で流通し始めた。価格も、だいたい米ドルで20ドル前後で安定してきている。この価格は日本円に換算すると2800円前後ということになるが、今回のコメ不足による価格高騰で、日本国内でもブランド米の価格は5キロで3000円というレベルになってきており、日本から見た内外価格差は解消しつつある。
その一方で深刻なのは、このまま進むと日本国内の日々の需要、つまり家庭用や、外食チェーン、あるいはコンビニ弁当などに必要な廉価なブレンド米などが、消えてしまうということだ。これは、国内向けの廉価な米が日本の短粒米(ジャポニカ米)ではなく、普及品はタイやアーカンソーなどで大量生産される長粒米になってしまうということである。すでに外食関係者からは、長粒米でも仕方がないという声は出始めている。だが、仮にそうなれば、これは日本の食文化としては大きな打撃になる。これを防ぐためには、日本国内での米作の大規模化、ハイテク化を加速して短粒米を普及品価格で出せるようにすることだ。ここが政策としても難しい点になると思われる。いずれにしても、日本のコメ作りは大きな岐路を迎えている。
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