以前、日本のある読みものを読んでいたら、「白いご飯(とおかず)を食べるのは、日本と中国だけのすばらしい習慣だ」、みたいなことが書いてあった。
西洋で米を食べるときはピラフにするし、的なことも書いてあったと思う。
ウーッ!
このテの誤りは、ただ誰かが思い込んでいる分には害はないのだが、出版物に書かれているのを見ると、僕としては耐えられない。
日本と中国どころじゃない。
これは世界中のあちこちにある習慣なのである。
早いはなし、韓国がそうだし、ベトナムやカンボジアなど、東南アジアの国々では、どこでもそうと言ってもいい。
ベトナムというと、いつもフォーと生春巻きでも食べてるという印象の人が多いだろうが、じっさいに行ってみると、街の屋台では、オカズと白いご飯を食べている人が多い。
インドのカレーもそうだし、フィリッピンも、汁っけのあるオカズを、白いご飯にかけて食べるのがもっとも一般的な食事だ。
むしろ、中国のほうが食べないくらいである。
たとえば香港。オカズは比較的淡白で薄味なものが多く、白いご飯は食べずにオカズだけ食べるのが普通だ。
そのかわり、炭水化物としてはワンタンスープを食べたり、あるいは食事の最後に炒飯や焼きソバを食べることも多い。
さらに北の方へ行くとご飯ではなく餃子を炭水化物にすることが多い。
白いご飯を食べる国は、もっとほかにもある。
中米、たとえばエクアドールでは、日本人とおなじように、野菜や肉といっしょに白いご飯を毎食食べる。
そのことをエクアドール人に聞いたら、「我々は日本人や中国人と共通の祖先だからね」みたいなことを言っていた。
たしかに、中南米の土着の人たちは、アジアから渡っていった人々の子孫である。
カリブ海諸国、たとえばキューバでもそうだ。
ただ、中米やキューバでちょっと日本とちがうのは、白いご飯と一緒にフレンチフライを食べたり、煮込んだ豆をご飯にまぜながら食べたりする。
さらには中近東。
特にイランは、まさに白いフカフカのご飯こそが「命」である。
シシカバブを注文すると、白い山盛りご飯の上に乗って出てくる。
そこにお好みでバターやタマネギ、焼いたトマトなどを自分で混ぜ込みながら食べる。
つまり、米というのは保存がきき、調理するのが簡単で、エネルギー源になる。
主食としてたいへん理にかなったものなのだ。
だからポリネシアでも、本来は炭水化物としてはタロ芋を食べていたのだが、いまは多くの人が白いご飯を食べている。
自給自足や物々交換で何百年もやってきたポリネシアの食文化は近頃の欧米化の波におされ、スーパーマーケットなどで米や缶詰などの食材を購入するという文化に急速に変わってきている。
なによりも、白いご飯はどんなオカズにもよくあって、ウマイ! と感じるのは、世界の人々に共通していることなのでしょうね。
(2008年6月16日号掲載)
白いご飯は日本だけ?
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