雇用ベースから婚姻ベースに、永住権申請は切り替えられる?

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Q.私は現在、雇用ベースで永住権を申請しています。4カ月前に「I-140」を、数週間前に「I-485」「I-944」「I-765」「I-131」を申請しました。労働許可証と一時渡航許可証はまだ承認待ちです。また、現在アメリカ市民との結婚を予定していまして、婚姻ベースで永住権を申請した方が、雇用ベースでの永住権を獲得するより早いと思うので、結婚した後に婚姻ベースで永住権を申請しようかと検討中です。もしその時点で労働許可証と一時渡航許可証が承認されていれば、婚姻ベースで改めて労働許可証と一時渡航許可証を申請せずにそのまま移行できますか。婚姻ベースでの永住権プロセスは、どのくらい短縮できますか。アドバイスを頂ければ幸いです。

A.まず、あなたの場合、就労ベースから婚姻ベースに切り替える価値があるかどうかを検討する必要があります。

現在の申請の進行状況により切り替えるべきかを判断する

アメリカ市民権を保持している方と結婚を通して申請する場合は、「I-130」と「I-485」を申請することになります。この後、約半年〜1年(パンデミックのため、審査期間が遅れ気味であることと、早いケースと遅いケースの間にかなり開きがあります)で永住権を取得することができます。ただし、ここで取得できるのは、永住権取得時点で婚姻後2年経過していない場合、2年の条件付きグリーンカード「Conditional Green Card」です。従って、この2年の有効期限が切れる前90日以降に、条件解除(Removal of Condition)の申請を行う必要があります。この申請には約1年を要します。従って、このプロセスには、合計3年~4年を要することになります。例外はあるものの、この間、婚姻が継続している必要があります。
 これに対して就労ベースで取得するグリーンカードは、最初から条件が付加されていない10年間有効なグリーンカードです。また、有効期限が2年のグリーンカードと10年のグリーンカードには、この有効期間以外にも大きな違いがあります。例えば、2年の条件付きグリーンカードの場合は、条件解除の手続きを怠る(忘れるなど)と強制送還の手続き(Deportation Procedure)の対象となってしまう可能性があるのに対し、10年間有効なグリーンカードの場合は、仮に有効期限が切れてしまった場合でも、強制送還の手続きに入る危険性はなく、国外への渡航に問題は生じるものの、更新の手続きが可能です。

本件の場合は、現在の申請を続ける選択が賢明と言える

あなたの場合は、「I-485」を就労ベースで申請してしまっているので、婚姻ベースに切り替える場合は、新たに、「I-485」を申請する必要があります。また、移民局の混乱を避けるため、就労ベースにおける「I-485」を取り下げる必要があります。さらに、「I-765」(EAD:就労許可証の申請)、「I-131」(一時渡航許可証の申請)は、「I-485」の申請にひも付いているため、こちらも移民局での混乱を避けるため、新たに婚姻ベースの「I-485」にひも付いた申請を行う必要が出てきます。
従って、あなたの申請が「I-485」を申請する以前であれば、婚姻ベースに切り替える手段も考えられますが、あなたの場合は、前述のように、必要とされる期間、「I-485」の入れ直しの手間とリスクを考慮すれば、現在の雇用ベースの申請に問題(例えば、会社がパンデミックのため「I-140」の審査を通過できるだけの資産状況でない、あるいは、同じ理由で解雇される危険性が高いなど)がない限り、切り替えない方が賢明と言えます。また、仮に、「I-485」の申請前であったとしても、婚姻ベースの場合は、前述しましたように、2年間の条件が付加されていないグリーンカードを取得するまでの期間が長いため、切り替えは慎重に行うことをお勧めします。
あなたの場合は、現在の雇用ベースの結果を待って、万一それが却下になり、仮にその時点で不法滞在になったとしても、配偶者が米国市民であるため、その時点からでも、(グリーンカード取得時まで渡航はできなくなるものの)婚姻ベースの申請が可能です。さらに、グリーンカードを取得した時点で、2年が経過していれば、最初から条件の付加されていないグリーンカードを取得することができるので、今の段階では、結婚が既に決まっているのであれば入籍だけ済ませることにより、2年間の婚姻期間の条件を満たすための時計をスタートさせておいた状態で、現在の雇用ベースの永住権の申請を継続させるのが賢明だと思います。そうすれば、万一、現在の雇用ベースの申請が却下され、その後、婚姻ベースの永住権の申請を行う場合でも、婚姻後2年が経過していれば、最初から条件の付加されていない10年の永住権が取得できるようになるからです。

※このページは「2021年1月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載のコラム『移民法のツボ(瀧 恵之)』を基に作成しています。情報は変更となる場合があります。あらかじめご了承ください。

◎ 瀧 恵之 / Yoshiyuki Taki Attorney at Law
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TEL 310-618-1818 / FAX 310-618-8788
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