Q. 私は現在、米国にて「L-1」ビザにて滞在しています。パスポート上のビザはあと2年あるのですが、認可証が再来月に切れてしまいます。トランプ大統領の発表により、今は「L」ビザの申請ができない、またアメリカ海外への渡航ができないなど、いろいろな話を耳にします。私は今後どうすればよいでしょう? 海外への出張も取引先から依頼されるので、できれば今後も渡航できる状態を維持したいと思うのですが、無理でしょうか?
A. 「L-1」ビザは、日本にある会社(親会社)から米国内にある会社(子会社)に派遣される人のためのビザです。このビザの主な条件は、米国にある子会社の(原則として)50%以上を日本にある親会社、あるいはその株主が直接的、あるいは間接的に所有していること、申請者が申請前の3年間のうち1年間以上は、親会社あるいはその関連会社において、管理職(「L-1A」)または特殊技能者(「L-1B」)として勤務していることなどが挙げられます。
既にビザを持っていれば 更新は今後も可能
トランプ大統領が2020年6月22日に行った発表では、確かに「L」ビザに今年いっぱいの制限をかけましたが、これは同年6月24日の時点でアメリカ国外に滞在していて、同日時点でビザを所持していない人だけが制限の対象となります。あなたの場合は既にビザを所持しているので、この制限の対象にはなりません(仮に6月24日にたまたま日本にいたとしても)。従って、あなたの認可証(「I-797」あるいは「I-94」)の有効期限が切れる前に、「L」ステータスの更新の申請を米国の移民局に行うことができます。認可証の有効期限が切れるまでに申請書を提出していれば、仮に今の有効期限までに認可が下りなくとも、(結果が出るまでは)最大240日までの米国での滞在・就労が可能になります。ただし、現在持っている運転免許証が現在の「I-94」の有効期限までになっている場合がありますので、注意が必要です。この場合は、「Premium Processing」 (1440ドルの追加申請料を支払うことで審査期間を15日に縮める申請)により早く結果を得るか、現在の「I-94」が切れてから、認可を得るまでの間、カリフォルニア州の場合は「AB60」を利用する方法が考えられます。「L」ステータスの認可を得た後は、あなたのパスポートにあるビザが有効な限り、アメリカ国外への渡航(出入国)が可能になります。
厳しさを増す「L」ビザの審査 「E」ビザへの切り替えも
ここで注意しないといけないことは、「L」ステータスの審査基準が他の種類のステータスの申請に比べて顕著に厳しくなっていることです。特に、トランプ政権は、大企業を優遇する傾向が見られ、いわゆる中小企業にとっては非常に厳しい審査基準が適用されています。さらに、従来までは、更新の場合は比較的緩やかな審査基準であったものが、更新の際も条件を満たしているか否かに関して再審査を行うとされています。従って、あなたが前回の申請で認可されたからと言って、更新の際も認可が保証されているわけではない、認可が容易ではない可能性もあるということです。親会社が上場されていたり、アメリカの会社に非常に高い売り上げがあり、多数の従業員を抱えていたりするような場合はほとんど問題がないのですが、申請の際の会社の状況(特に従業員の数および売り上げ)がコロナパンデミックなどが原因でよくない場合は、「L」ステータスの更新ではなく、他のステータスへの切り替えも視野に入れた方がよいかもしれません。例えば、「L」ステータスの条件を備えている場合は、ほとんどの場合が「E」ステータスの条件を備えています。「E」ステータスの条件は、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を米国との通商条約を結んでいる国の国籍を持つ人あるいは会社(日本人あるいは日本の会社)が所有していること、スポンサーとなる米国の会社がその国(日本)と貿易を行っていること(「E-1」)、あるいはスポンサーとなる会社に一定額の投資を行っていること(「E-2」)です。「E」ステータスの申請は、(もちろん個々のケースにより異なりますが)「L」ステータスに比べて比較的緩やかであると言えます。「E」ステータスに切り替えた場合は、そのままの状態では渡航ができなくなりますが、日本のアメリカ大使館にて面接(徐々に再開されています)を受け、「E」ビザを取得すれば、その後の渡航を行うことができるようになります。また、「E」ステータスの場合は、「L」ステータスと異なり、最大延長期間に制限がありません。あなたの会社の状況が著しく悪い場合は、渡航をいったん諦め、会社の状況が改善された後に日本のアメリカ大使館にて面接を受けるという策も考えられます。これらの諸条件・状況を鑑み、あなたの会社の状況に応じた的確な判断を行うことをお勧めします。
※このページは「2020年9月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載のコラム『移民法のツボ(瀧 恵之)』を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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