Q. 私は現在、日本のあるIT企業に勤めています。今までは、代理店を通してアメリカでの営業活動などを行ってきましたが、アメリカでのマーケット拡大のため、昨年アメリカに子会社を設立しました。私がそこの代表者として赴任するように言われ、「L-1」ビザの申請を行いました。移民局からの認可は出たのですが、コロナウイルスのためアメリカ大使館での面接が受けられず、ビザの発給を受けることができません。遠隔で事業を行っていますが限界があります。このままでは、アメリカに設立した会社の運営が危ういまま、時間だけが過ぎてしまいます。何か良い方法はないでしょうか?
A. あなたの場合、日本のアメリカ大使館において緊急面接を申請できる可能性があります。まず、「L-1」ビザは、日本にある会社(親会社)から米国内にある会社(子会社)に派遣される人のためのビザです。このビザの主な条件は、米国にある子会社の(原則)50%以上を日本にある親会社、あるいはその株主が、直接的または間接的に所有していること、申請者が申請前の3年間のうち少なくとも1年間以上、親会社あるいはその関連会社において管理職、または特殊技能者として勤務していることなどが挙げられます。
不可欠な人材であることを強調し、緊急面接をリクエスト
「L-1」ビザの場合は、最初にアメリカの移民局(USCIS)に申請を行い、認可を受ける必要があります。審査期間は通常3カ月程度です。本来ならば、通常の申請料金に1410ドルを追加で支払えば、15日間での審査(Premium Processing)が可能になりますが、現在はコロナパンデミックのため、このPremium Processingは停止されています。移民局で審査を受け認可されると、日本のアメリカ大使館・領事館での面接を受けます。この面接をパスすれば、面接の後パスポートをアメリカ大使館・領事館に預け、その後早ければ2〜3営業日、遅くとも1週間から10日間程度で、ビザの付いたパスポートが指定した日本の住所に送られてきます。
しかし、現在日本のアメリカ大使館・領事館では通常の面接は行っていないため、あなたの場合、緊急面接のリクエストを行う必要があります。ここでは、あなたがアメリカに赴任しないとアメリカの子会社の経営が危険にさらされることを、できる限り具体的に説明することが重要です。この緊急面接のリクエストが受け付けられると、アメリカ大使館より、Eメールにて日時の通知が送られてきます。
駐在員ビザはいずれも緊急面接のリクエストが可能
この緊急面接のリクエストは、「L-1」ビザに限らず、その他のビザ面接、例えば「L-1」同様に管理職・特殊技能者のビザである「E-1」「E-2」ビザの場合にも適用されます。「E-1」「E-2」ビザは、日米通商条約に基づいて規定されているビザで、アメリカに対して貿易(「E-1」)あるいは投資(「E-2」)のために申請するビザです。また、この貿易・投資を行っていること以外に、アメリカにある会社の50%以上の株式を通商相手国(日米間で貿易あるいは投資が行われている場合は日本)の会社、あるいは通商相手国の国籍保持者(米国籍やグリーンカード保持者は不可)が所有していることが条件になっています。さらに、申請者自身も通商相手国の国籍(パスポート)を有している必要があります。「E-1」「E-2」ビザの場合、申請を行うアメリカの会社が日本のアメリカ大使館・領事館に会社登録がされている場合は、「L」ビザのように移民局での審査を受ける必要がなく、面接を受けるのみでビザの発行を受けることができます。会社登録とは、申請の時点で当該会社に「E」ビザを保持している従業員(申請者本人を含む)が存在していることが条件とされています。若干の例外もあるので、会社登録に関して不確定な場合は、申請前に会社登録の有無を直接アメリカ大使館・領事館に問い合わせるのが安全です。 また、アメリカの会社が「L-1ブランケット」の認可を受けている場合、「E-1」「E-2」ビザにおける会社登録がある場合と同様、移民局からの認可を受ける必要がなく、緊急面接を受けることさえできれば、コロナパンデミックの間でもビザの発給を受けられます。「L」「E-1」「E-2」ビザは、管理職あるいは特殊技能者に与えられるビザのため、緊急面接をリクエストする際には、申請者がアメリカにいないとアメリカの会社で多数の雇用の継続・維持が困難になるなど、申請者のアメリカの会社における役割がいかに必要不可欠かを強調するのがポイントです。 また、前述のように、アメリカ大使館・領事館は通常の面接はコロナパンデミックのため受け付けていませんが、更新に限り郵送での受付も行っています。ただし、アメリカに滞在しながらの受付は行っていませんので、申請期間中は日本に滞在する必要があります。
※このページは「2020年6月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載のコラム『移民法のツボ(瀧 恵之)』を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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