Q. 私はある日系の会社にて「H-1B」ビザにて働いていて、パスポート上のビザ期限もあと2年残っているのですが、コロナパンデミック後の会社の経営不振により今月いっぱいで解雇されることになりました。アメリカの大学を卒業後やっと手に入れたアメリカでの仕事なので、このまま諦めたくなく、他の会社で働くことができればと思うのですが、トランプ大統領が今年いっぱいの「H-1B」ビザの停止を発表したこともあるので、今後どうすればよいか途方に暮れています。何かアドバイスをいただけないでしょうか?
A.トランプ大統領の2020年6月22日の発表では、同年6月24日時点でアメリカ国外にいて、かつ同日の時点でビザを保持していない人のみが対象になるため、あなたの場合、この措置の影響を受けることはありません。
退職から60日後までに 新たな会社から申請が必要
「H-1B」ビザの場合、会社を辞めた後、60日間の「Grace Period」が与えられています。この60日間は、今の会社から給料をもらって最後に働いた次の日から始まります。この60日間が終わるまでに、新しい会社を見つけ、「H-1B」ビザの申請を行うことが間に合えば、この手続きを全てアメリカ国内にて行うことができます。また、このトランスファー(雇用主の変更)の手続きは、毎年行われている「H-1B」ビザの抽選の対象にはなりません。この「H-1B」ビザのトランスファーの手続きは、新しい会社が申請者となって移民局に申請書を提出することによって行います。この申請書を移民局が受け取った時点で、新しい会社で働き始めることができるとされています。申請書を提出した後は、約3カ月で認可、あるいは追加資料の請求が来ます(現在は大幅に変わることもあります)。追加資料の請求が来た場合には、その請求された資料を提出した後、約1〜2カ月で、認可あるいは却下の通知が来ます。申請を行う際、「Premium Processing」(通常の申請料に加えて1440ドルを余分に支払う)を使って申請すれば、審査期間を約15日間以下に縮めることができます。とはいえあなたの場合、前述したように、申請書が移民局に到着した時点で働き始めることができるため、手続き期間を縮めることはあまり大きな意味はないかもしれません。ここで気を付けないといけないのは、「H-1B」ビザの申請を移民局に提出する前に、労働局から「Labor Condition」を取得する必要があり、この手続きに7~10日間程度を要することです。従って、60日間の「Grace Period」が終了するまでに、「Labor Condition」を取得し、移民局に申請が行える期間を確保しておく必要があります。もし、新しい仕事が見つかるのが遅くなった、あるいは手続きが期間内に間に合わないような場合は、いったんアメリカから出国し、日本(アメリカ国外)で待つ必要があります。この場合は、移民局からの認可証を受け取った後にアメリカに戻って新しい会社で働くことになりますが、アメリカ入国の際には、前の会社を通して取得した「H-1B」ビザ(あなたの場合は残り約2年間有効)にて入国できるため、日本のアメリカ大使館・領事館にて面接を受けて新たに「H-1B」ビザを取得する必要はありません。従って、現在(20年9月14日現在)コロナパンデミックに伴い日本のアメリカ大使館・領事館は「H-1B」ビザの面接を停止していますが、この影響を受けません。
60日を過ぎてしまっても 国外から認可証の取得は可能
また、万が一アメリカ国内でのトランスファーの申請が却下になってしまったような場合でも、諦めず、いったんアメリカを出国し、「H-1B」ビザの再申請を行う手段も考えられます。この場合、この2度目の申請で「H-1B」ビザの認可証を移民局から受け取ることができれば、前述の場合と同じく、アメリカ大使館・領事館での面接を受けることなく、前の会社を通して取得した「H-1B」ビザを使ってアメリカに入国し、新しい会社で再度働き始めることが可能です。この「H-1B」ビザが有効な限り(認可証の有効期限ではありません)、その後のアメリカからの出入国も可能になります。この場合は、前の会社を通して取得した「H-1B」ビザと新しい会社を通して取得した認可証を入国審査官に提示することになります。このトランスファーの手続きは、必ずしも同じ業種の会社間で行う必要はなく、申請者が大学で学んだ内容(専攻)が、その会社で生かすことができる役職が存在する限り、異業種の会社間で行うこともできます。なお、「H-1B」ビザの最大延長可能年数は6年です。この間、何度雇用主の変更を行っても構いません(厳密には、変更後の会社で1カ月以上働いた時点で、雇用主の変更が可能です)が、最大延長期間の6年は変わりません。
※このページは「2020年10月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載のコラム『移民法のツボ(瀧 恵之)』を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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