アメリカ駐在員ビザ(Lビザ)とは
主に日本の会社がアメリカにある関連会社に社員を駐在させるために使うビザ。
- 有効期間「L-1Aビザ」:最初3年、その後2年(最長7年) 「L-1Bビザ」:最初3年、その後2年(最長5年)
- 更新の可否「L-1Aビザ」:最初の3年終了後、2年の延長を2回 「L-1Bビザ」:最初の3年終了後、2年の延長を1回
- 取得にかかる時間:2~3カ月(プレミアム申請は約2週間)
- 費用概算(弁護士費用含む):5000ドル~
- 配偶者の扱い:「L-2ビザ」
- 配偶者の労働可否:可(労働許可証の取得後)
「Lビザ」の種類と「Eビザ」との違い
「Lビザ」は企業内転勤者用のビザで、国外からアメリカ国内の関連会社への異動に使われることから「駐在ビザ」「駐在員ビザ」などと呼ばれています。主な申請条件は次の通りです。
①異動元の会社で過去3年間のうちに継続的に最低1年勤務した。
②異動元で重役・管理職、または専門知識を有する者として勤務し、異動先(駐在先)でも継続して重役・管理職(「L-1Aビザ」)、または専門知識を有する者(「L-1Bビザ」)として勤務する予定である。
③(設立から1年未満の子会社、支店を除き)異動先の会社でビジネス活動の実態がある。
「H-1Bビザ」とは異なり、「L-1Aビザ」「L-1Bビザ」とも大卒でなければならないなどの学歴の制約はルール上ありません。しかし、高卒以下の学歴の場合は、それを補う職務経験などが必要です。
よく「Eビザ」との違いが分からないという声を聞きますが、「Lビザ」は現存している会社間での異動を円滑にするためのものであるのに対し、「Eビザ」はアメリカへの多額の投資と雇用創出を奨励するためのもので、そもそもの趣旨は異なります。とは言え、会社は「Lビザ」取得の要件となる支店や子会社をアメリカで拡張・設立するために、必然的に(日本側から)設備投資や買収の形で出資・投資をすることがあります。すると、「Lビザ」と同時に「Eビザ」の取得要件も満たせる場合があり、「Lビザ」が却下されても「Eビザ」で再申請したら取得できたという話もあります。また、日本人の「Eビザ」投資家が経営する会社に、業務上不可欠な職員(Essential Employee)を「E-2ビザ」で赴任させることができますが、この職員は投資をする必要はありませんので、その意味では業務に関する専門知識で貢献する者に発給される「L-1Bビザ」と似ていると言えます。
アメリカの「Lビザ」を取り巻く環境
移民法専門の関谷直樹弁護士によると、以前から「Lビザ」の審査は非常に厳しく、トランプ政権の発足によって申請・取得の難易度が変化したということはないと言います。さらに同弁護士は、「組織全般、業務内容、決算報告書などの会社全体像を鑑みて重役・管理職の実態や専門知識の有無などが精査され、高い頻度で追加書類等を要求されます」と現状を語っています。
会社によっては、実を伴わない名前だけの「重役」や「管理職」を置いていますが、これは額面通りには認められませんし、移民局が業務内容や専門知識の重要性を理解できるよう上手に説明しなければ申請は却下されます。実際、「Lビザ」の却下理由の多くは、「組織に中身が伴わない」「実際の部下がいない」「肩書きと実務が不一致」といったものが多く、会社の規模が小さくなればなるほど、組織表や業務内容をより詳細に申告しなければならないケースが多いようです。
最後に関谷弁護士は、「『L』ビザ自体は、国際的に大きくビジネス展開する会社を念頭に置いているため、規模の小さい会社は厳しく見られる傾向にあります」と話しています。
「Lビザ」の申請方法とアメリカ永住権
「Lビザ」の新規申請プロセスは、
①スポンサー会社がI-129(申請請願書)を移民局に提出
②承認後、アメリカ大使館でビザ申請
③ビザ取得後入国
というのが一般的です。異動先企業の収入が年間2500万ドル以上、従業員数が1千人以上、または過去1年間の「Lビザ」請願書の承認数が10件以上の大規模企業であれば、複数の職員をまとめて承認してもらう「ブランケット」という特別プロセスを利用できます。
「L-1Aビザ」は重役や管理職を対象に発給されるビザであり、取得後、優先順位が高い「EB-1」で永住権を申請することが可能です。中でも「EB-1C」という特別のカテゴリーでは、多国籍企業の重役・管理職を対象に優先的に永住権が発給されるため、該当者は利用する価値大です。このカテゴリーでは労働省の許可(「Labor Certification」)の取得は不要で、会社側の請願書である「I-140」と同時に永住権申請書「I-485」を提出できるため、待ち時間はありません。
これに対し「L-1Bビザ」保持者は永住権申請において労働省の許可が必要で、通常、優先順位が低い「EB-3」となるため、「I-140」の提出後しばらく待ち時間が生じる可能性があります。こうした状況と、「L-1Bビザ」は有効期間が「L-1Aビザ」の7年に比べて5年と短かいため、関谷弁護士は早い時点での永住権申請開始を勧めています。
(取材協力:関谷直樹弁護士/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載)
※この記事は2017年9月1日現在の情報です。掲載後、内容が変更・改正される場合がありますので、最新情報や個別の事例につきましては移民法弁護士にお問い合わせください。
※以下、過去にライトハウス・ロサンゼルス版のコラム「移民法Q&A」に掲載された関連記事をご紹介します。
- 日本国籍以外の従業員を駐在員として派遣するには?
- 勤務先がアメリカ企業に株式を売却。駐在員ビザ(L-1ビザ)を維持できますか?
- 自分の会社が譲渡された場合、駐在員ビザ(L-1ビザ)はどうなりますか?
- アメリカ子会社に派遣中、会社が合併 このまま就労は続けられる?
- 駐在員ビザL 、申請条件と種類・滞在期間
Q:私は、日本のある会社の海外事業部で働いています。私の会社は、数年前にアメリカに子会社を設立しており、アメリカへの駐在員の配置を私が担当しています。この度、会社の役員からの指示で新しい駐在員をアメリカに送ることになりました。今までは、Eビザにて駐在員を送るのが主流でしたが、この候補者はモンゴルの出身で、Eビザが取れません。Lビザを申請するにも、彼の部下となるアメリカ現地での従業員が多くありません。何かよい策はあるでしょうか?
A:まずEビザは、日米通商条約に基づいて規定されるビザで、日本の会社あるいは個人が、アメリカに対して貿易ビザ(E-1ビザ)、あるいは投資ビザ(E-2ビザ)を行っていることを前提に申請を行うビザです。他に、アメリカにある会社の50%以上の株式を通商相手国(日米間で貿易あるいは投資が行われている場合であれば、日本)の会社、あるいは通商相手国の国籍保持者(米国籍やグリーンカードを保持している人は認められません)が所有していることが条件になっています。さらに、申請者自身も通商相手国の国籍(パスポート)を有している必要があります。従って、あなたの言う通り、今回のケースの駐在員候補の方は日本のパスポートを保持していないため、Eビザを申請することはできません。
L-1Aビザ、L-1Bビザ取得の可能性は考えられる
次にL-1ビザは、日本にある親会社からアメリカ内にある子会社に派遣される人のためのビザです。このビザの主な条件は、アメリカにある子会社の原則的に50%以上を日本にある親会社あるいはその株主が、直接的あるいは間接的に所有していること、申請者が申請前の3年間のうち1年間以上、親会社あるいはその関連会社で管理職(L-1Aビザ)、または特殊技能者・専門職(L-1Bビザ)として勤務していることなどです。「間接的に所有」しているとは、日本の会社の50%以上の株式を所有している人または会社が、アメリカの会社の50%以上を所有している状態を指します。
あなたの言う通り、L-1Aビザ(管理職ビザ)の場合は、日本の会社において相当数の部下がいたこと、およびアメリカに赴任後の役職においても相当数の部下がいる予定であることが要求されます。一方L-1Bビザ(特殊技能者・専門職ビザ)の申請においては、部下がいることは要求されません(もちろんこの場合でも、部下がいるケースの方が認可される可能性は高くなります)。ただしこの場合は、申請者が特殊技能を保持していて、その特殊技能が貴社で活用できることを説明しなければなりません。ここでいう特殊技能は特に、あなたの会社が保持している特殊技能、すなわち貴社特有のものであることが好ましいとされます。実際には、一般的な特殊技能を保持しているだけで認可されているケースも見受けられますが、本来は同業他社にはない、貴社特有の技術・製造過程・サービスなどに関する技能、専門性が要求されます。
典型的な例では、あなたの会社が特許を持っているような場合であれば、その説明に説得力を増します。また、その申請者がその特殊技能を熟知している必要があります。そのため、L-1Bビザ申請の法的な条件としては、日本の会社、またはその関連会社にて1年以上勤務していればよいだけですが、それ以上の期間、その特殊技能に携わる職務を行っていれば、申請が有利に進められます。ただしL-1Bビザの申請の審査基準は、一般的にL-1Aビザに比べて厳しいと言えます。
申請者の状況を見極めて申請するビザの種類を決める
審査の厳しいL-1Bビザを避けて、L-1Aビザの申請を行う場合は、あなたの言う通り、申請者の部下になる従業員が何人いるのかが重要な要因となります。実際には、日本およびアメリカの会社の規模、事業の種類など、他の要因も加味して総合判断がなされるため、具体的に何人いればよいという明確な数字はありません。しかし、少なくとも6~7名以上の部下がいることが好ましいと考えられます。もしあなたの言う通り、当該申請者がアメリカで勤務する際に十分な数の部下を持つ予定でなければ、申請が却下されるリスクを負う可能性があります。
そこで、もし申請者が、2022年現在日本の会社において指揮監督を行っている部下の全員あるいは一部でも、アメリカに赴任した後も、アメリカから継続して指揮監督をする立場にあれば、その従業員の人たちも申請者の部下として考慮してもらうことができます。ただしもちろん、アメリカに部下がいることの方が重要ではあり、アメリカにいる部下に比べて説得力は弱くはなります。この場合は、申請の際に提出する組織図で、指揮監督の体系を分かりやすく描くことが重要です。以上の事項を念頭において、適切な申請を行うことをお勧めします。
(2022年6月1日号掲載)
Q:私は2021年現在、アメリカの日系企業に勤めています。ビザはL-1ビザです。私の会社はコロナパンデミックの影響を受け、2021年中に米国の投資家に株式の大部分を売却することになりました。この場合、私はL-1ビザを保持し続けることができるのでしょうか。
A:L-1ビザは、日本にある会社(親会社)からアメリカ内にある会社(子会社)に派遣される人のためのビザです。このL-1ビザの主な発行条件は、アメリカにある子会社の(原則的に)50%以上を、日本にある親会社あるいはその株主が、直接的あるいは間接的に所有していること、また、申請者が申請前の3年間のうち1年間以上は親会社、あるいはその関連会社において管理職(L-1Aビザの場合)または特殊技能者(L-1Bビザの場合)として勤務していることなどが挙げられます。
L-1ビザ(駐在員ビザ)の認可自体は緩和される傾向にある
前トランプ政権においては、ビザの審査基準に関して大企業を優遇する方向性が見られ、特にLビザの審査基準においては、中小企業にとってはかなりの難関になっていました。具体的には、売り上げだけでなく従業員の数も重要な要素となり、従来までは従業員の部下が3人ほどで認可されていた案件でも、7~10人以上の部下を必要とする場合がほとんどになっていました。そのため、仮にL-1ビザの延長申請であっても却下されてしまうこともあったくらいです。
しかしながら、バイデン政権に替わり、大企業のみを優遇する傾向は薄れてきているように思えます。「L-1」ビザに関しても、若干ではありますが緩和の傾向が見られ、今後これが継続することが期待されます。さらにビザの更新に関しても、トランプ政権下では、過去に認可されている事実は考慮されず、更新の際にも新たに審査を行うとされていましたが、バイデン政権下では、更新の際は以前の認可が考慮されるようになりました。
株式売却後のビザは、日米の会社の関係によって決まる
本件に関してですが、L-1ビザのスポンサーとなっているアメリカの会社(子会社)が株式を売却した場合に、L-1ビザのスポンサーとなり続けることができるかどうかは、日本の親会社と売却後の米国の会社との関係が、株式売却後も移民局が定義するところの「親会社」と「子会社」の関係にあたるかどうかということになります。この条件を満たしていればL-1ビザは保持できますし、そうでなければ、失効してしまう可能性があります。
移民局は、子会社の株式売却後も、日本にある会社がアメリカの会社を「所有」しているかどうか、また「指示を与え、規制・監督」する立場にあるかどうかということを審査の対象とします。移民局では、「所有権」を、「指示を与え、規制・監督する十分な権限の法的所有」を行っていること、「指示を与え、規制・監督」することは、「事業体の経営および営業を管理・監督する権利および権限」と定義しています。
移民局は、株式売却後も親会社と子会社の関係において、親会社が実質的に子会社を「所有」しており、また「指示を与え、規制・監督」する立場にあれば、その「所有」関係、および「指示を与え、規制・監督」の程度に変更が加えられること(親会社の所有する株式の割合や監督体制が変わるなど)は構わないとしています。また、これには、二つの会社間で「所有」の割合、および「指示を与え、規制・監督」する程度を同じくする50/50の合併会社も含まれるとされています。ですからあなたの場合、あなたの会社の株式の50%以上が投資家に売却されなければ、L-1ビザを保持し続けることができます。
一方、あなたの所属する会社の親会社が合併後、50%以上の株式を所有しなくなる場合(半分以上の株式が売却されたような場合など)には、実質的な「所有」の条件を満たさなくなりますので、「指示を与え、規制・監督」する程度においても実質的に50%を下回る場合は、ビザ・ステータスを失う原因となります。ただ、50%以上の株式を所有しなくなる場合であっても、L-1ビザを保持することができる可能性はあります。投資家があくまで投資だけを目的とし、経営に参加する意思がなく、子会社自身がその投資家から株主総会における投票権の代理委任を得ており、あなたの会社が実質的な経営権を握っているような場合(例えば、「Class B Share:投票権のない株式」)は、このことを証明することで、L-1ビザの要件を満たせる場合があります。
移民局の規制においては、上記のように会社の構成自体に変更があった場合、変更の申請を義務付けていますが、小さな変更であればL-1ビザの延長手続き時に報告するのみでよいとされ、重大かつ実質的な変更が行われた場合にのみ、即時に報告する必要があるとしています。
(2021年9月1日号掲載)
Q:私は2020年現在、アメリカにL-1ビザにて滞在しています。近い将来、私の会社が米国の投資家に株式の大部分を売却する予定があるという話を聞きました。私はL-1ビザを保持し続けることができるのでしょうか。特に私の家族はアメリカでの滞在を強く希望しており、今回の株式譲渡による私のステータスが不安です。
A:L-1ビザは、日本にある会社(親会社)からアメリカ内にある会社(子会社)に派遣される人のためのビザです。このビザの主な条件として、アメリカにある子会社の(原則的に)50%以上を日本にある親会社、あるいはその株主が直接的・間接的に所有していること、申請者が申請前の3年間のうち、1年間以上は親会社あるいはその関連会社において管理職(L-1Aビザの場合)、または特殊技能者(L-1Bビザの場合)として勤務していることなどが挙げられます。
L-1ビザの審査は特に中小企業で厳しく
トランプ政権になって以降、あらゆるビザの審査基準に関して大企業を優遇する方向性が見られます。それに伴い、いわゆる中小企業にとっては非常に厳しい審査基準が適用されています。特に、Lビザの審査基準においてはそれが顕著です。親会社が上場していたり、アメリカの会社が非常に高い売り上げがあり、多数の従業員を抱えているような会社、特に「L-1 ブランケット」(移民局の審査を行うことなく、直接アメリカ大使館でビザの申請ができる資格)を保持している会社等は別として、中小企業にとってはかなりの難関になっています。
具体的には、売り上げだけでなく従業員(申請者の部下)の数が重要なキーとなり、従来は部下が3人ほどで認可されていたケースでも、今では7~10人以上の部下を必要とする場合がほとんどです。仮にL-1ビザの延長申請であっても却下される危険性もあるくらいです。従って、更新であっても、Lビザの申請を避けてEビザの申請を行うケースが多くなってきています。一方で前述のように、従業員を多数抱える会社は優遇される傾向にあり、依然として容易に認可を受けています。
L-1ビザ保持は、会社の「所有権」の保持にかかってくる
本件ですが、L-1ビザのスポンサーとなっているアメリカの会社(子会社)が株式を売却した場合に、L-1ビザのスポンサーとなり続けることができるかどうかは、日本にある親会社と売却後のアメリカの会社との関係が、移民局が定義するところの「親会社」と「子会社」の関係にあたるかどうかということによります。この条件を満たしていればビザを保持できますし、そうでなければ失効する可能性があります。
移民局は、日本にある会社が子会社の株式売却後も、アメリカにある会社を「所有」しているかどうか、また「指示を与え、規制・監督」する立場にあるかどうか、を審査の対象としています。移民局では「所有権」を、「指示を与え、規制・監督する十分な権限の法的所有」を行っていることとし、「指示を与え、規制・監督」することについては、「事業体の経営、および営業を管理・監督する権利および権限」と定義しています。移民局では、株式売却後も親会社と子会社の関係において、親会社が実質的に子会社を「所有」しており、「指示を与え、規制・監督」する立場にあれば、その「所有」関係および「指示を与え、規制・監督」の程度に変更が加えられること(親会社の所有する株式の割合や監督体制が変わる等)は構わないとしています。
これには2つの会社間で「所有」の割合および「指示を与え、規制・監督」の程度を同じくする50/50の合併会社も含まれるとされています。ですから、あなたの場合、あなたの会社が50%以上の株式を投資家に売却しなければ、あなたはL-1ビザを保持し続けることができます。
ただし売却後、あなたの所属する会社の親会社が50%以上の株式を所有しなくなる場合(吸収合併されたような場合等)は、実質的な「所有」の条件を満たさなくなりますので、「指示を与え、規制・監督」する程度においても実質的に50%を下回る場合は、ビザステータスを失う原因となります。逆に、例えば50%以上の株式を所有していないよう場合であっても、投資家があくまで投資目的だけであって、経営に参加する気はなく、子会社自身がその投資家から株主総会においての投票権の代理委任を得ており、あなたの会社が実質的な経営権を握っているような場合は、このことを証明することによってL-1ビザを保持できます。
移民局の規制においては、前述のように会社の構成自体に変更があった場合、申請書の変更を義務付けていますが、小さな変更であればL-1ビザの延長手続き時に報告するのみでよいとされ、重大かつ実質的な変更が行われた場合にのみ、即時の報告義務があるとされています。
(2020年2月1日号掲載)
Q:大学で経営学を学び、日本の商社で6年勤務した後、L-1(派遣)ビザで日本の会社よりアメリカの子会社に派遣され働いています。現在、この子会社がアメリカの別会社と、9月を目処に合併する計画が進んでいます。合併や吸収によって会社の形態が変わった場合、ビザ保持者にどのような影響が出るのでしょうか?
A:ビザの種類(主にLビザ、Eビザ)によっては、会社の合併や吸収などで、申請書類の変更、一部申請手続きのやり直し、もしくはビザ自体が無効になる可能性があります。
LビザとEビザの取得条件の一つは、日本の親会社が、米国の子会社の株を50%以上保有していることです。米国の子会社の合併後も、親会社が50%以上の株保有率を維持している場合、ビザ申請書類に記入した内容の変更を移民局に提出すれば、ビザを取り直す必要はありません。しかし、親会社の株保有率が50%以下になった場合は、LビザとEビザの取得条件を満たさなくなり、ビザは無効になります。その結果、米国での滞在、および労働許可を失ってしまいます。
この問題を事前に防ぐために、現在お持ちのビザをほかのビザに切り替える手続きを、できるだけ早く始めてください。その場合、H-1Bビザなど、会社の国籍に影響されない労働ビザの取得をおすすめします。
他のビザ、または永住権へ会社の合併前に申請開始
H-1Bビザ取得のためのおおまかな条件は、①申請者が学士号以上、またはそれに匹敵する職務経験を保持している、②申請する業種は、学士号以上の学歴、専門知識が要求されるものである、③その学士号、あるいは職歴が、職務において活かされるものであることです。
H-1Bビザの申請受付は、4月1日より開始しています。ビザ発給数が年間支給枠に達した時点で、受け付けは締め切られます。4月20日現在、6万5000の枠に対し、2万5000の申請が届いているという状況ですので、今ならH-1Bビザ申請は十分可能です。ビザ取得後、仕事を開始できるのは10月1日以降になります。
仮に、Lビザ、またはEビザの有効期間が、今年の12月まであるとします。会社の合併が9月30日にあり、日本の親会社の株保有率が50%以下になるとします。H-1Bビザの申請がビザの切り替えのタイミングに合わない(例えば、申請前に枠が埋まり、受け付けが締め切られてしまった)場合、会社の合併後、たとえLビザ、またはEビザの有効期間が残っていたとしてもそのビザは無効になりますので、米国から出国しなければなりません。しかし、9月30日以前にH-1Bビザの申請が移民局に受理され、10月1日までに認可される、もしくはケースが審査中の場合は、そのまま滞在することが可能です。H-1Bビザに切り替える際、職務内容や給料設定など、細かな条件を満たす必要がありますので、早目に会社の担当者と検討されることをおすすめします。
また上記以外に、LビザまたはEビザが失効する前に、永住権申請を始める方法も考えられます。今回のケースでは、大学を卒業し、スポンサーである雇用主の業務に関連した職務に5年以上従事しているので、修士号を持つ人と同等の知識があるとみなされ、「EB-2」というカテゴリーで永住権が申請できます。会社の形態に変更があった場合でも、申請上の影響はありません。
雇用を通しての永住権申請の場合、大きく分けて3つのステップがあります。第1ステップは、「Labor Certification」(労働局の審査-PERMと呼ばれるもの)です。米国内にあなたが従事する職務を遂行できる米国人がいないことを証明する審査です。第2ステップ(I-140)では、主にスポンサーである会社が、労働局で定められた給料をあなたに払うことができるかの審査です。最後に第3ステップ(I-485)として、申請者自身が条件を満たしているかの審査が行われます。EB-2の場合、第2、第3ステップを同時に行うことができます。I-485の申請をすると、「労働許可書(EAD)」と「渡航許可書(AP)」が与えられ、この時点でビザは必要なくなります。
あなたの場合、直ちに永住権申請の手続きを始め、9月の合併完了までの間は、そのままL-1ビザ保持者として会社の業務に携わり、合併終了後までに、EADとAPを取得できれば、そのほかのビザを申請する必要はありません。
ビザの種類選択、申請時期の判断、取得条件の理解は、複雑な米国移民法の知識が要求されると同時に、長年の経験が求められます。判断を誤ると、あなたが築き上げた米国での生活を失うことになりかねません。一日でも早く移民法専門の弁護士に相談することをおすすめします。
(2012年5月16日号掲載)
Q:日本からの派遣社員が対象、管理職の経験が必要
A:Lビザは、1970年4月7日、アメリカからの輸出の拡大や海外市場での競争力の向上などを目的に、非移民ビザのカテゴリーの1つとして設けられました。国務省の手引きによると、L-1ビザを申請するには以下の条件を満たす必要があります。
1)申請者(会社)と派遣される社員が雇用されていた会社は、親会社、支店、合併会社、子会社など同系の企業にある
2)派遣される社員は、重役、管理職クラス、または特殊技能を持つ者であり、アメリカでも同じポジションに就くことになっている
3)申請者(会社)と派遣される社員とは雇用関係にある
4)会社側はアメリカ以外に最低1カ国で事業を運営している
5)派遣される社員は過去3年間に最低1年間、申請者(会社)側で管理職として働いた経験がある
6)派遣された社員が支店などを設立するために派遣される場合、新たな条件が課される
7)派遣される社員が、以前にLもしくはHビザで滞在していた場合、または特殊な交換訪問者としてJビザで滞在していた場合、再入国に際する制限を受けていない(滞在できる期間を満期で帰国し、再びLビザを取って入国する場合、LやHビザだった者は1年間、Jビザだった者は2年間、アメリカ国外にいるという条件を満たす必要がある)
Lビザ保持者は“Dual Intent”が許可されています。これはアメリカに永住するか、しないか、両方の意志を同時に持ってもよいということです。ですから、Lビザ保持者は母国に居住地を持っている必要はありません。また以前に、またはこれからグリーンカードの申請をするからといって、Lビザ取得の可否が左右されることはありません。
Lビザの資格条件に見合うためには、日本で過去3年間に、少なくとも1年間は管理職レベルの業務に携わっていなければなりません。一般的に、派遣される前にアメリカに訪問していた期間が、Lビザ取得を妨げるということはありませんが、アメリカにいた期間が、Lビザを再申請する際に課される“1年間の米国外滞在”という条件の対象にはなりません。また、パートタイムで雇用されている社員は申請条件を満たしません。
派遣される社員が本社の関連会社を設立する目的でアメリカへ来る場合、アメリカでのオフィスの場所が確保されていることが必要です。これを証明するためには、Lビザ申請書を移民局へ提出する時に、オフィススペースの賃貸契約書を添付することになります。
L-1Aは最長連続7年、L-1Bなら5年まで
新しく関連会社を設立する目的以外で一社員がLビザを申請する場合、ビザの有効期限は通常3年未満、申請期間分が許可されます。関連会社設立が目的の場合は、有効期限が1年以下になります。重役・管理職クラスのL-1Aの場合、最長で連続して7年まで延長できます。特殊技能者のL-1Bは、最長で連続して5年までの延長が可能です。その後、再びLまたはHのステータスで入国するには、米国外に1年間滞在しなければなりません。もっと長く米国に滞在する予定なら、Eビザや、多国籍企業の重役・管理職としてグリーンカードを申請することを考慮した方がよいでしょう。
L-1保持者の配偶者と21歳未満の未婚の子供はL-2ビザに相当します。L-2保持者はアメリカで学校に通うことができます。カリフォルニア州の多くの公立学校などでは、L-2のステータスで1年以上滞在していれば、州住民と同額で授業を受けることができます。L-2の学生は今通っている学校に、F-1の学生と異なる扱いになっているか、聞いてみるとよいでしょう。また、L-1の配偶者は労働許可を取って合法的に働くことができます。
アメリカに入国する際は、Lビザを提示し、白(緑ではない)の入国・出国記録書(I-94カード)に記入してください。さらに、I-94カードに記された日付以降、アメリカに滞在しないよう気をつけてください。この日付は時々、ビザの有効期限日と異なっていることがあります。もし、自分が間違ったカテゴリーで入国を許可されていた場合、ロサンゼルスのダウンタウンにあるDeferred Inspections (300 N. Los Angeles St.)へ出向き、間違いを正すよう要求することができます。また、I-94カードに記された日付以降もアメリカに滞在する予定であれば、許可された滞在期間が過ぎる前に、滞在延長を移民局に申し込むことが重要です。
(2007年7月16日号掲載)
●関連記事
アメリカ・ビザの基礎知識とその種類
特別企画:アメリカでワーキングホリデーのように働ける!「J-1ビザインターンシップ」徹底解説
アメリカ・ロサンゼルス留学~おすすめ大学・語学学校の最新情報