Q.私はグリーンカード保持者です。アメリカで付き合っていた日本人の彼がいたのですが、彼は昨年の3月にパンデミックのため、「E」ビザにて仕事をしていた会社からレイオフされてしまい、その後日本に帰国しました。パンデミックが収まるのを待っていたのですが、遠距離での交際が1年以上経ち限界を感じており、結婚して彼をアメリカに呼び寄せることを考えています。私がアメリカ市民権を取得した方が彼を早く呼び寄せることができるのでしょうか? また、グリーンカード申請のスポンサーになるには、ある程度の収入が必要であると聞きましたが、いくらくらいあれば良いのでしょうか?
A.現在のところ、結婚によるグリーンカード申請では、スポンサーとなる配偶者が米国市民である場合もグリーンカード保持者である場合も、手続き期間に違いはありません。トランプ前大統領により、グリーンカード保持者が海外から呼び寄せを行う場合はその手続きが停止されていましたが、これも2021年2月24日にバイデン大統領により解除されました。
グリーンカードの申請と市民権申請を並行して進める
ただし、あなたが米国市民権保持者である場合とグリーンカード保持者である場合では申請のカテゴリーが異なるため、今後の手続きの速さに違いが出る可能性があります。従って、あなたが市民権の申請を行うことは、手続きが遅くなってしまうことへのリスクヘッジになります。ただし、米国市民権申請の手続きには約1年を要するため、市民権を取得した後に彼のグリーンカードの申請を行うと時間的にロスが出てしまう可能性が大いにあります。そこで、このリスクヘッジを行うのであれば、彼のグリーンカードの申請を行いつつ、あなたの米国市民権の申請も同時に行うのが得策と言えます。将来的に、グリーンカード保持者による申請のカテゴリーの進み具合が市民権保持者による申請のカテゴリーよりも遅くなった場合に、途中で申請を切り替えることができるためです。
彼のグリーンカード申請の手続きを行う手順ですが、最初にグリーンカード保持者であるスポンサー(あなた)が、米国の移民局に「I-130」という申請書を提出します。「I-130」が認可された後、そのケースはNational Visa Centerを介して日本のアメリカ大使館に送られ、彼は日本のアメリカ大使館にて面接を受けることになります。この面接は、日本人である配偶者(彼)のみで受けることができます。面接をパスした後は、パスポートに半年間有効な移民ビザが貼られ、返送されてくることになります。
そして、米国入国の際に空港の移民局にて、今度は1年間有効の「I-551」というスタンプが押され、この時点で法的にグリーンカード保持者となります。グリーンカードはその後、約1~2カ月で、指定したアメリカの住所に郵送されます。グリーンカードを取得するまでの全ての手続きには、1年半~2年ほどを要しています。
もし、この手続きをしている期間に彼のアメリカでの就職が決まり、「E」ビザなどを取得してアメリカに来ることができれば、前述の「I-130」以降の手続きをアメリカ国内において継続することもできます(ただし、ESTAによる入国ではこの手続きはできません)。この場合は、「I-485」という申請書を移民局に提出し、申請を行います。この場合は、就労許可および一時渡航許可を取得した後、米国内の管轄の移民局にて面接を受けることができます。
スポンサーとして必要な年収と申請の注意点
本件のような、結婚による申請に必要なスポンサーの収入は、年間2万1775ドルです。もし、あなたや彼に子どもなどの扶養家族がいる場合は、扶養家族1人につき、5675ドル加算されます。この金額に満たない場合は、足りない金額(差額)分の5倍の資産があれば良いとされています。
もし、それも足りない場合は、Joint Sponsorと呼ばれる連帯保証人を見つけることにより申請が可能になります。このJoint Sponsorの条件は米国市民あるいはグリーンカード保持者であることで、血縁・雇用関係などは必要ありません。Joint Sponsorとなる人に必要な収入は、2万1775ドルに加えて「(Joint Sponsorとなる人の家族の人数 + もしいれば、あなたの扶養家族の人数)×5675ドル」という計算になります。
最後に、この手続きで注意しないといけないことは、入籍する時には彼がアメリカに来るか、あるいはあなたが日本に行って入籍する方が良いということです。特に現在のパンデミックの状態では面倒なことではありますが、彼が日本のアメリカ大使館で面接を受ける際に、入籍後一度も2人が会っていないという状態は避けた方が安全と言えます。
※このページは「2021年5月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載のコラム『移民法のツボ(瀧 恵之)』を基に作成しています。情報は変更となる場合があります。あらかじめご了承ください。
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