- 不法滞在中でもスポンサーが見つかれば、永住権は取得できる?
- アメリカにオーバーステイ中でも、永住権申請ができるようになる?
- 永住権申請が滞り不法滞在に、永住権保持者の妻として再申請可能?
- 家族を通した永住権申請、不法滞在中でも取得できる?
Q:13年前の1998年に学生としてF-1ビザでアメリカに入国しました。8年前にビザが切れ、5年前から学校には通っていません。現在、レストランでアルバイトをしていますが、オーナーが永住権のスポンサーになってもいいと言ってくれています。私は、永住権を取得することが可能でしょうか?
A:まず最初に、「ビザ」と「ステータス」について、説明しましょう。ビザに記載されている有効期限は、その日付までアメリカに自由に入国できることを意味します。ですからビザは、その有効期限内であれば、アメリカへの入国審査を通過できるというためだけの「入国許可書」に過ぎません。ビザの発行は、アメリカ国外の大使館、あるいは領事館で申請する必要があります。
一方、ステータスとは、アメリカに滞在できる期間を意味します。滞在できる期間は、「I-94」というアメリカ入国の際に必要な書類に記載されています。I-94は、通常、飛行機の中で配布され、記入後、入国管理官が審査し、パスポートにその一部が添付されます。そこに記入されている期限が、アメリカ滞在の許可期限になります(これは、ビザの有効期限と、必ずしも同じではありません)。
学生ビザの場合、「D/S」と記入される場合がほとんどです。これは、就学終了まで滞在してもいいという意味です。よって、学校からの「I-20」を保持し、就学していれば、ビザが切れていても、アメリカでの滞在は合法です。
ですから、あなたの場合、アメリカでの不法滞在は、5年前に学校を辞めた時点から始まっています。
アメリカ国内に不法滞在し、移民局がそれを察知すれば、国外退去処分が下される可能性があります。そうなると、再度アメリカに入国する際に、入国拒否を受ける可能性があります。
1997年から、アメリカに180日以上、1年未満の期間、不法滞在した場合、アメリカを出国してから3年間は、再度アメリカに入国することができなくなりました。不法滞在期間が1年以上になる人は、出国から10年間、アメリカに再入国できません。また、これらの再入国ができない期間が過ぎても、その後アメリカへ問題なく入国できるという保障はありません。
不法滞在の救済手段とその条件
原則として、アメリカ国内でステータスを回復するための方法はありません。アメリカ市民との結婚、またはアメリカ市民の21歳以上のお子さんを通じての永住権申請は、現在、不法滞在か否かを問わず、合法的にアメリカへ入国していれば、取得できます。
しかし、その条件が揃っていない人は、恩赦を待つ以外に方法はありません。移民法245条(i)項は、アメリカ国内でステータスを回復させる窓口を開きました。この条項の適用を受ければ、不法就労も不問となります。適用を受けるには、以下の条件を満たさなければなりません。
①2001年4月30日までに、「I-130」(家族を通しての永住権申請)、あるいは、「I-140」(就労を通しての永住権申請)、または「労働証明書申請(Labor Certification Application)」が受理されている
②2000年12月21日以降、アメリカに滞在し、出国していない
③1000ドルの罰金を払う
以上の条件を満たせば、移民法245条(i)項の適用を受けられます。
なお、適用を受けるには、①で行った申請が認可される必要は、必ずしもありません。2001年4月30日までに永住権の申請さえ行っていれば、その申請が却下されたとしても、その後の永住権の申請において、同法の適用を受けることができます。
あなたの場合、1998年に学生としてアメリカに入国し、2000年にアルバイトしていたレストランを通して永住権申請を始め、労働証明書申請の認可を得、移民局へI-140の申請を行ったとします(ちなみにI-140は、スポンサーであるレストランが、労働局で定められた給料を払うことができるかどうかという審査です)。この間に、経営不振でレストランが潰れ、2000年に始めた永住権申請が却下されたとしましょう。この場合でも、新たに別のレストランで永住権の申請を開始できれば、2000年度の申請が却下されていたとしても、あらたな永住権申請に同法が適用されます。ですので、あなたが永住権を取得する道は、残されているというわけです。
しかしながら、もし2001年4月30日までに、永住権の申請をしていない場合は、次の恩赦が下りるのを待つしかないでしょう。
(2011年11月16日号掲載)
Q:私は最初、大学生としてアメリカに来て、卒業後はある日系の会社でOPTにて働いていました。OPT終了後もその会社からのサポートでE-2ビザへのステータスの変更を申請しましたが、却下されてしまいました。不運にも、その際却下されたことを知らされず、却下の通知を知った時には、すでに3カ月以上オーバーステイの状態になっていました。非常に悩みましたが、いったんアメリカを出ると戻れないことを恐れ、そのまま現在に至っています。2021年になって、私のような状態でもグリーンカードを申請できるようになるかもしれないという話を聞いたのですが、本当ですか?
A:最初に、今回のコラムの内容は、2021年の現段階ではあくまで法案であり、まだ具体化(施行)されていない、また今後も具体化されない可能性も十分にあることをご承知ください。アメリカ議会は、一定の条件の下、不法滞在者が合法的なステータスを確保できるようにするため、1100億ドルを超える予算を組むことを準備しています。これにより、不法滞在者を含む数百万人の移民が救済される道が開かれる可能性が出てきたとされていて、あなたもその対象になる可能性があります。この法案は今後、具体化まで検討が繰り返されることになります。現在のところ、考慮されている案がいくつかありますが、以下、代表的な二つについて解説します。
主に親に連れられてきた子を対象とする「Dream Act」
一つ目は、最近耳にされたことがある方もいると思いますが、「Dream Act」と呼ばれる法案です。この「Dream Act」は、11度にもわたり、法案がアメリカ議会に提出されてきたもので、子どもの頃に(ほとんどの場合は、親に連れられて)アメリカに来た不法滞在者が、アメリカ市民権(グリーンカード)を取得できる道を開くことを目的としています。
これに当てはまるのはまず、DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)の対象者(この場合は、現時点で既に就労許可を得ていることになります)、あるいはアメリカに入国した時点で、17歳または18歳以下であり(現行法案が二つあり、それにより異なります)、高校を卒業あるいはGED(日本の大検に相当)を取得している、あるいは高校またはGED取得のプログラムに在学中であることです。加えて、①大学、または短大を卒業あるいは2年以上在学している、②米軍に2年以上従事している、③3年間以上就労していて、そのうち75%以上は就労許可を持っていた(短大、専門学校に在籍した場合は免除)、という3つのいずれかを満たす場合に、条件付きグリーンカードが取得できるとされています。
20年ぶりの適用が期待される「INA 245(i)」
次に、「Immigration and Nationality Act 245(i)」(以下「INA 245(i)」)の適用です。「INA 245(i)」は、アメリカに長く居住されている方は過去に耳にしたことがあるかも知れませんが、定められた期日までに永住権(グリーンカード)の申請を行い、一定の料金(罰金に相当します)を支払うことにより、過去に不法滞在、不法就労があったとしても永住権を取得できるとする規定です。
ここで言う、定められた期日および一定の料金ですが、直近では、かなりの歳月を遡りますが、2001年4月30日までに永住権の申請を開始した場合は、1000ドルを従来の申請料に加えて余分に移民局に支払うことにより、過去に不法滞在および不法就労があったとしても、永住権を取得できるとされました。この後、2001年10月に再度この期日の指定が予定されていましたが、2001年の9月11日のテロ事件のため延期になり、その後も法案は何度となく提案されるものの、「INA 245(i)」に基づく新たな期日の指定はなされないまま2021年に至っています。従って、今回、この「INA 245(i)」の適用がなされれば、20年以上ぶりということになります。
「INA 245(i)」における「不法滞在者」に関して特記すべき点は、オーバーステイ(アメリカに合法的に入国した後、与えられた有効期限内を超えて滞在し続ける場合)のみならず、不法入国者をもその対象としていることです。例えば、アメリカ市民権を保持する配偶者を通して永住権(グリーンカード)を申請する場合、オーバーステイの状態でもグリーンカードの申請・取得が可能ですが不法入国の場合は、Waiver(免除)申請などの手続きを行わない限り申請は認められないとされています。
しかし「INA 245(i)」の下では、不法入国の場合もその対象の範疇にあるとされています。なお、ここでの「永住権の申請を開始する」とは、移民局にグリーンカードの申請書を提出、あるいは労働局に「Labor Certification(労働認可証)」の申請書を提出した時期を指します。 冒頭に述べたように、今回の内容はあくまで法案であり、これのみを頼りにはせず、また今後の法案の行方をよく確認されることをお勧めします。
(2021年11月1日号掲載)
Q:日本人の母とアメリカ人の父を持ち、日本で育ちました。幼い頃に両親は離婚し、父はアメリカに帰国。1997年に父を頼ってB ビザでアメリカに入国し、1998年に家族ベースの永住権の申請を始めました。しかし、申請中に父が他界したため申請を中断。1998年から不法滞在になっています。今お付き合いしている彼は永住権保持者です。彼がアメリカ市民になり私と結婚すれば、私の不法滞在歴は許され、永住権を取得できると聞きました。彼のステータスが永住権保持者である限り、私は永住権を取れないのでしょうか?
A:家族ベースの永住権申請は、その優先度がいくつかのカテゴリーに分かれています。21歳以下のアメリカ市民の子供、配偶者、両親は最優先の位置付けで、永住権保持者との結婚の場合は、第2優先Bのカテゴリーに当てはまります。
アメリカ市民が配偶者の永住権を申請する場合、「I-130」(家族を通しての永住権申請)と「I-485」(アメリカの滞在資格申請)を同時に申請できます。「I-485」を申請すれば、永住権を取得するまでアメリカ国内で待つことができます。ところが、永住権保持者が配偶者の永住権を申請する場合、これまではその2つを同時に申請できませんでした。ですので、「I-130」の認可後、移民局から「I-485」を提出して良いという許可(優先日)が回ってくるまで、数年待たなければなりませんでした。
永住権保持者の配偶者の永住権申請は今がチャンス
2013年7月に発表されたVisa Bulletin によると、現在、永住権保持者との結婚により永住権を申請している人に優先日が回ってきています(2013年8月時点)。そのため、8月1日から8月末までであれば、永住権保持者が配偶者の「I-130」と「I-485」の申請を同時に行えます。
9月以降も引き続き同じ状況であれば、彼のステータスが永住権保持者のままでも、アメリカ市民が配偶者の永住権を申請するケースと同じくらいのスピードで配偶者の永住権取得が可能になります。
ただし、この状況はいつまで続くのかはわかりません。永住権保持者で、結婚により配偶者の永住権申請をしたいが市民になるのを迷っていたり、市民になるのに数年待たなければならない方の配偶者にとっては、今がチャンスと言えます。
移民法245条(i)項による不法滞在ステータスへの救済
アメリカ市民との結婚により永住権を申請する場合、それまでの不法滞在歴は許されます。ところが、永住権保持者との結婚により永住権を申請する場合、それまでの不法滞在は許されません。しかし、あなたの場合は下記の恩赦が適用され、永住権保持者との結婚でも不法滞在を許され、永住権を取得できる可能性があります。
通常、非合法でアメリカに滞在している事実を移民局が知った場合、国外退去処分が言い渡される可能性があります。不法滞在者は、1度アメリカを離れると再入国する際に入国拒否を受ける可能性があります。1997年より、アメリカに非合法な状態で断続的に180日以上1年未満滞在した場合、出国から3年間はアメリカに入国できなくなりました。非合法滞在が1年以上になる人は、出国から10年間はアメリカに入国できません。あなたの場合、アメリカを出国すると10年間再入国できなくなるので、アメリカ国内でステータスを回復させなければなりません。
移民法245条(i)項は、アメリカ国内でステータスを回復させる窓口を開きました。この条項の適用を受ければ、不法就労に関しても許されることになります。適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
①2001年4月30日までに、永住権申請、「I-130」あるいは、「I-140」(就労を通しての永住権申請)、または、Labor Certification Application (労働証明書申請)が労働局で受理されていること。
②2000年12月21日以降アメリカに滞在し、同国から出国していないこと。
③1000ドルの罰金を支払うこと。
以上の条件を満たしていれば、移民法245条(i)項の適用を受けることが可能です。①に関しては、2001年4月30日までに行った申請が、必ずしも認可されている必要はありません。2001年4月30日までに何らかの永住権の申請を行っていれば、仮にその申請が却下されていたとしても、その後(仮に2001年4月30日以降であっても)の永住権の申請においても、移民法245条(i)項の適用を受けることができます。
ですから、1998年にアメリカに入国し、市民であるお父様を通して、同年に永住権申請を始め、移民局へ「I-130」の申請をしていたとします。1998年度の申請は却下されていても、現在の別の方法での永住権申請に移民法245条(i)が適用され、永住権の取得が可能になるということです。
(2013年8月16日号掲載)
Q:私は2000年末に、米国市民である姉を通して永住権の申請を行いましたが、未だ待っている状態です。5年前から学校に通えなくなったことからビザを失い、現在は不法滞在の状態です。私はこのまま待っていれば、永住権を取得することができるのでしょうか?また、取得できるとすれば、いつ頃でしょうか?
A:家族を通しての永住権(グリーンカード)の申請は、4つのカテゴリーに分かれています。
Immediate Relative(直近の親族)
●米国市民の配偶者
●米国市民の21歳未満の子供
● 米国市民の両親(この場合、スポンサーとなる米国市民は21歳以上であること)
● 亡くなった米国市民の配偶者で、その配偶者が亡くなった時点で、2年以上結婚していた場合
これらに該当する人は、発給の最優先となり、それ以外に人は、以下のような順位付けとなります(ただし、中国本土で生まれた人、インド、メキシコ、フィリピン国籍の人は除く)。
第1優先(First Preference)
米国市民の21 歳以上の未婚の子供
第2優先a(Second Preference A)
永住権保持者の配偶者、または21 歳 未満の子供
第2優先B(Second Preference B)
永住権保持者の21 歳以上の未婚の子供
第3優先(Third Preference)
米国市民の既婚の子供
第4優先(Fourth Preference)
米国市民の兄弟姉妹(この場合、スポンサーとなる米国市民は21 歳以上であること)
米国では、移民法201 条(INA §201(C))により、年間どれだけの人数に永住権を発給できるかが定められています。そのため前記の Immediate Relative のカテゴリーを除き、移民局に永住権申請をしてから取得まで、一定期間待たされているのが現状です。具体的には、現在(2011年6月時点)、第1優先カテゴリーでは、2004年5月1日に申請を開始した人の順番が回って来ているところです。これが第2優先Aでは、2007年8月22 日、第2優先Bでは、2003年4月15 日、第3優先では、2001年6月1日、第4優先では、2000年3月8日となっています。ただし、この順番が回って来た時点で永住権が取得できるわけではなく、ここから手続きの第2段階(実際の永住権取得のための手続き)に入ることになります。
優先日を待ち罰金を支払えば取得可能
あなたの場合は、姉が米国市民権を保持しているということですので、第4優先カテゴリーにあてはまります。このカテゴリーにおいては、前述のように、2000年3月8日の優先日を待っている人たちが、現在実際に永住権取得への手続きを始めています。従って、優先日が国務省から発表されれば、永住権にステータスを変更する手続きが取れます。
現在、米国に居住しているのであれば、米国内で永住権にステータス変更ができます。2011年現在、申請書(Adjustment of Status)を申請してから永住権取得まで、約6カ月を要しています。手続きとしては、申請後約6週間で指紋を取り、犯罪歴のチェックがされます。また、申請より2、3カ月で移民局より就労許可が下り、働きながら待つことができるようになります。最後は面接になりますが、姉妹関係にあることを戸籍等で証明するだけなので、結婚を通して申請する場合のように、その結婚が虚偽でないことを立証する書類を準備する必要はなく、簡単な面接で終わる可能性が非常に高いと言えます。面接後は約3週間で永住権が送られてきます。その後はもちろん、合法的に出入国が可能になります。
また、現在のステータスが不法滞在になっていたとしても、2000年12月以降、米国から出国していなければ、移民局に1000ドルの罰金を支払うことで、永住権の申請が可能です。これは、INA245 条(i)項に規定されており、不法滞在だけでなく、不法就労も許されることになっています。申請書を提出する際に、過去5年間の職歴を記載することになりますが、万一、不法就労していたとしても、そのまま記載するようおすすめします。現在まで、どのような経済的サポート下で生活してきたかを聞かれる場合が多いからです。
(2011年7月1日掲載)
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