(2024年5月号掲載)
アメリカでは、医療の専門家を目指す場合、学部を卒業した後にメディカルスクールに進学します。メディカルスクールは、ロースクールやビジネススクールなどと同じく専門家の育成を目指す大学院レベルのプログラムで、4年で修了するのが一般的です。
学部の専攻は自由
メディカルスクールは学部を卒業してから進学します。学部での専攻は何でも構いません。BiologyやPsychologyを専攻する学生が比較的多いですが、HistoryやMusicなど、医療とあまり関係のない専攻でも問題ありません。どの専攻でも、将来メディカルスクールでの学習に必要となる分野(Biology、Chemistry、Organic Chemistry、Neuroscience、Behavioral Sciences、Physicsなど)のクラスは一般教養で履修しておくと良いでしょう。メディカルスクールでの学習に役立つ分野を効率的に学べるPre-Medicalというコースを有する大学もあります。
人の役に立つ活動と外国語スキル
人の役に立つ活動を続けることは、メディカルスクール進学の準備に最適です。英語のチューター、水泳のインストラクター、先生の研究活動の手伝いなど、大学在学中に自分の興味や特技を生かせる活動に取り組む機会はいくらでもあるはずです。また、メディカルスクールに進学する前に、病院で臨床以外の分野のボランティアをすることは、将来の仕事への知見を深める上で、貴重な経験となります。
また、スペイン語や中国語でコミュニケーションがとれる医師は、医療機関で重宝されます。そのため、メディカルスクールのアドミッションでも外国語のスキルはかなり重視されます。外国語のスキルに不安がある学生は、交換留学などで当該言語が使われている地域に赴き、スキルアップを図ることをお勧めします。もちろん、日英バイリンガルの学生も評価してもらえます。
Pre-Health Advisorに相談する
Pre-Health Advisorは、医療の専門家を目指す学生を支援する専門家です。多くの大学では学内でPre-Health Advisorのコンサルテーションを受けられ、進学準備のアドバイスをもらえます。Pre-Health Advisorのサービスが学内で得られない場合は、NAAHP(National Association of Advisors for the Health Professions)でアドバイザーを紹介してもらえます。
MCATの準備を早めに始める
メディカルスクールの出願では、MCAT(Medical College Admission Test)のスコアを提出する必要があります。端的に言うとSATのメディカルスクール版で、スコアの提出が義務付けられており、合否に大きく影響する点がSATと異なります。MCATの学習時間は、300~350時間と言われています。Junior(3年生)になったらテスト勉強を始めることをお勧めします。具体的な対策や目標スコアはPre-HealthAdvisorと相談すると良いでしょう。
ギャップイヤーの取得を検討する
高校卒業から大学進学までの猶予期間を保つ場合、この期間をギャップイヤーと呼びますが、大学を卒業後、メディカルスクールに入学する前にギャップイヤーを取るケースも増えています。AAMC(Association of American Medical Colleges)が実施したアンケート調査によると、2022年にメディカルスクールに入学した学生のうち、42%が学部卒業後にギャップイヤーを取ったそうです。メディカルスクールに入学する際の平均年齢が、年々上がっているのもうなずけます。
ギャップイヤー取得の目的はさまざまです。学部の生活が忙しく、進学準備に十分時間を割けなかった学生は、ギャップイヤーで自分に合うメディカルスクールを探し、MCATの試験対策をします。メディカルスクール入学後は、学習と実習でストレスフルな日が続くので、その前にリフレッシュしてメンタルヘルスを整えたいという学生もいます。
メディカルスクールは、原則としてアメリカ人を対象としたプログラムで、非永住の学生はアプライできる大学が限られます。メディカルスクール進学も、学部の大学選びと同様に、自分に合う大学を選ぶことが重要です。
(2024年5月号掲載)
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