(LA版2022年6月16日号掲載)
アメリカの大学の学費は高額なので、多くの学生はファイナンシャル・エイドを得て進学します。ファイナンシャル・エイドにはさまざまな種類があり、その中で、学費全額を自費で支払うのが困難な学生が不足分(ファイナンシャル・ニード)の一部または全部を負担してもらう制度が、ファイナンシャル・ニードベースの奨学金です。
そして、このファイナンシャル・ニードの有無や、金額を算出するために最も利用されているサービスがFAFSA(Free Application for Federal Student Aid)です。このFAFSAがリニューアルします。パンデミックで所得格差が広がったことなどを受け、低所得者層の支援を主眼に置いた変更です。すでに2021年度から一部のリニューアルは始まっており、2023年7月には完了し、2023-2024年度から適用される予定です。
EFCからSAIへ
各家庭が1年間に負担できる学費の上限額をEFC(Expected Family Contribution)といいます。EFCが、1年間にかかる学費の総額(授業料、寮費、食費およびその他の諸経費)を下回る場合、差額がファイナンシャル・ニードとなります。FAFSAに登録された家庭の収入や資産の情報を元に、EFCが算出されます。
今回のリニューアルで、EFCはSAI(Student Aid Index)という名称に変わります。算出方法が大きく変わるわけではありませんが、算出の根拠となるデータは少し変わる可能性があります。FAFSAは入力項目が多く、受験生に大きな負担となっていました。今回のリニューアルにより、入力項目が108から36以下に削減されます。
2人以上在籍する家庭への影響
今回のリニューアルで、最も物議を醸している変更が、複数の子どもが同時に大学に在籍する家庭の救済措置の廃止です。例えば、現行のFAFSAでは、EFCが4万ドルの家庭で2人の子どもが同時に大学に在籍する場合、家庭で負担できる学費は、子ども1人当たり2万ドルと判定されます。
リニューアル後のFAFSAでは、2人目の子どもが大学に進学しても、それぞれの子どものEFC(SAI)が4万ドルで算出されます。複数の子どもが同時に大学に在籍する家庭に大きな影響を与えるため、この制度の導入は2024-2025年度まで延期される見通しです。
Pell Grantの受給資格
連邦政府は、低所得家庭の学生にPell Grantという奨学金を給与します。リニューアル後のFAFSAでは、Pell Grantの受給資格の有無をファイナンシャル・エイドにアプライする前から確認できます。また、FAFSAによるEFC(SAI)の算出の際、収入の区分けについても細かい変更が加えられます。これも、PellGrantの対象となるような低所得家庭の救済が狙いです。
FAFSAとCSS Profile
FAFSAによるEFC(SAI)の算出方法をFM(Federal Methodology)と言います。FMは広く利用されていますが、EFC(SAI)の算出方法はFMだけではありません。ファイナンシャル・エイドが充実している一部の大学では、大学独自の基準でEFC(SAI)を算出しており、それはIM(Institutional Methodology)と呼ばれています。
IMを採用する大学は、主にCSS Profileというサービスを利用しています。FAFSAは米国の市民権または永住権を有する学生が対象です。従って、FMを採用する大学は、FAFSAの対象とならない学生のファイナンシャル・ニードは一切考慮しません。これに対し、非永住の学生のファイナンシャル・ニードも考慮する大学はIMを採用しています。非永住の学生や外国人留学生にもCSSProfileの提出を求めている大学は全米で100校以上にのぼります。
FAFSAもCSSProfileも登録開始は12年生の10月1日です。米国市民や永住者がIMを採用する大学を受験する場合は、CSSProfileに加え、FAFSAも提示する必要があります。大学からファイナンシャル・エイドを得る学生は、進学後もFAFSAを使うので、毎年情報を更新します。年度の途中で家庭の経済状況が大きく変わった場合は、速やかに大学の担当者に連絡を取り、相談してください。(2022年6月16日号掲載)
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