理数系が得意な学生の中には、将来エンジニアとして社会で活躍したいと考える人も多いと思います。STEM分野は、大学の専攻でも人気が高く、各大学がさまざまなプログラムを提供しています。今回は、エンジニアを目指す学生が、大学選びで考慮すべき点をまとめました。
大学院進学を考慮した大学選び
学部教育は幅広い教養を身に付け基礎学力を高めることが主目的で、専門分野を極める教育は主に大学院というのがアメリカの高等教育の基本的な考え方で、これはSTEM分野にも当てはまります。そのため、エンジニアを目指す人の多くは大学院に進学します。
専攻分野の大学の評価を気にする高校生もいますが、それはあまり重要でありません。工学系大学の評判や知名度は、主に大学院や研究レベルの評価によるもので、学部教育の質とは必ずしも一致しません。学部教育に力を入れている大学と、大学院レベルの研究に注力している大学が異なることもあり、アメリカでは、学部と大学院で異なる学校を選ぶのが一般的です。
大学院進学が前提なら、学部は大学院進学の準備という側面も重要です。有名大学に進学しても、成績が伴わなければ満足のいく大学院進学は望めませんし、逆に無名大学でも、成果を挙げれば大学院進学は有利となります。むしろ、大学院が併設されていない小規模の大学の方が、質の高い教育を提供している場合があります。
エンジニアリングを専攻するべきか
STEMの中でも、エンジニアリング(工学)は少し特殊です。自然科学系と異なり、工学系専攻は全ての大学にはありません。しかし、大学選びは、エンジニアリングのプログラムがある大学だけに絞る必要はありません。
自然科学系と工学系の学部教育を比較すると、専攻分野における学習方法の違いはありますが、どちらも数学、物理、化学などのSTEM分野における基礎学力を高めることを主眼としたプログラムであることに変わりはありません。したがって、工学系の専攻がない大学に進学して学部で物理や化学を専攻しても、学部で工学系を専攻した学生に大学院で遅れをとる心配も、大学院のアドミッションで不利になる心配も無用です。
エンジニアリングが学べる大学
学部でエンジニアリングを専攻したい場合、選択肢は大きく4つあります。
①総合大学
州立大学や学生数が数千人以上の規模の私立大学は工学部を有しています。大学院が併設されていることもあり知名度が高く、工学系専攻を目指す学生に良く知られた進学先です。
②工科大学
理工系の専攻が充実している大学です。他の専攻が少ない点を除けば、総合大学とそれほど違いはありません。先端研究で有名な工科大学でも、学部教育で先端分野を扱うことはあまりなく、むしろ教養教育に力を入れている大学も数多くあります。
③工学系専攻のあるリベラルアーツ・カレッジ
リベラルアーツ・カレッジは教育の質の高さに定評がありますが、工学部を持たない大学が多く、エンジニア志望の学生には見過ごされがちです。しかし、工学系を学べるリベラルアーツ・カレッジもあります。小規模校ならではのきめ細かいサポートが魅力です。
④3-2EngineeringProgram
リベラルアーツ・カレッジで3年間履修した後、工学系の専攻を持つ提携大学で2年間履修するプログラムを、「3-2EngineeringProgram」と言います。5年間の学習が終わった時点で、在籍した2つの大学からそれぞれ学位が得られます。学部で2つの学位が得られるため、デュアルディグリー・プログラムとも言われています。工学系の専攻を持たないリベラルアーツ・カレッジで広く採用されている方法です。自分にとってベストな進学方法を見つけてください。 (2021年7月16日号掲載)