(2024年7月号掲載)
大学での人気の専攻は、時代と共に変化します。中でも、近年、履修を希望する学生が最も増えている専攻がComputer Science(CS)です。
CS専攻を目指す学生の変化
21世紀初頭、CSは人気の専攻ではありませんでした。ITバブルの崩壊で、2002年のアメリカのIT関連失業者数は56万人に達し、多くのIT関連の業務は他国にアウトソーシングされるようになりました。CSを専攻しても、米国内で就職は難しいと考える学生が増えたことが、不人気に陥った主な要因です。
状況が変化したのは、スマートフォンが普及し始めた2008年。アプリケーションの開発やビッグデータを活用したAIの研究が盛んになり、CS専攻を希望する学生が増加しました。
University of Washingtonでは、CS専攻を希望する学生が10年間で5倍以上増えました。他大学もCS専攻の新設や、既存プログラムの拡大など、対応に追われています。しかし、それでも一部の大学はCSの履修者数を成績などで制限せざるを得ない状況です。
難関化するCS専攻のアドミッション
University of Michiganは、CSの定員を10年間で4.5倍に増やしました。しかし、それでも需要を満たせず、学生に、大学にアプライする時点でCS専攻を選択することを義務付けました。University of Washingtonも、CS専攻を希望する学生には、Direct to Major(専攻を決めて大学にアプライする)を求めています。CS専攻の希望者の急増は、進学の難関化を意味します。事前に専攻を決めてアプライするタイプの大学はもちろん、そうではない大学も、CS専攻を希望する学生の合格率が下がる可能性があります。
一方で、大学進学後に、ゼロからCSを学びたい学生もいます。そのような学生を積極的に支援するプログラムを有する大学もあります。
CS専攻を目指す大学選び
CS専攻を目指す大勢の高校生が、自分を差別化することは、容易ではありません。AP Computer Scienceは、CS専攻を目指す高校生なら誰もが履修し、ロボティックスやSTEMのクラブも多くの高校生が参加しています。
難関大学は、将来ITで世界を変えるリーダーを育てたいと考えているので、CSとは直接関係のない分野でのリーダーシップの経験や、コミュニティーでの活動などが、高く評価される場合もあります。自分に合ったアドミッション戦略を実行することが重要です。
また、CSの専攻を検討中の高校生は、将来、世の中のどんな問題を解決したいか考えてください。分野によってはCS専攻を選ぶ必要はないからです。例えば、CSの知識を医療分野で生かしたい人はBiomedical EngineeringやBioinformaticsの専攻が、ビジネス分野で生かしたい人にはApplied Mathの専攻が合うかもしれません。
なお、近年はCSや統計学など、複数の分野にまたがるData Scienceの専攻が脚光を浴びています。幅広い視野で目標を立てることをお勧めします。
(2024年7月号掲載)
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