(2024年9月号掲載)
近年の物価上昇に伴い、大学の学費も高騰しています。例えば、2024-25年度のUCLAのCost of Attendance(全額自費で払った場合の1年間の学費)は5年前と比較し、州内学生が4万2059ドルで17.5%増、州外学生は7万6259ドル16.3%増です。
学費を抑えるため、高校卒業後に学費の安い公立の2年制大学、コミュニティー・カレッジを選ぶ学生が増えています。例えば、カリフォルニア州内学生の場合、Santa Monica Collegeの1単位あたりの授業料は46ドルです。しかし、コミュニティー・カレッジから4年制大学へのトランスファーはリスクを伴います。
私立大学へのトランスファー
トランスファーで難関大学を目指す場合、フレッシュマンで進学するより狭き門となる場合が少なくありません。多くの私立大学にとって、トランスファー学生の受け入れは、欠員補充が主な目的だからです。特に教育の質の高い大学では、アスリート以外でトランスファーを希望する学生は少なく、結果的に受け入れ学生数も少なくなります。例えばBrown Universityが23年にトランスファーで受け入れた学生は、2744人の受験者のうち73名でした。
仮に合格しても、単位認定の問題に直面します。コミュニティー・カレッジで取得した全ての単位を転学先で認定してもらうことはほぼ不可能です。転学先の大学と同じ教科書で同じ内容を学んでいても、単位認定されないケースが多々あります。クラスの取り直しが増えれば、卒業時期が延び、学費も余分にかかります。
州立大学へのトランスファー
州立大学は、一定数のトランスファー学生を受け入れることで一般教養課程のコストを削減しています。同一州内の2年制コミュニティー・カレッジと4年制の州立大学は単位互換協定を結んでいる場合が多く、単位が認められないリスクは避けられます。楽に進学できると思われがちですが、必ずしもそうではありません。National Student Clearinghouseの調査によると、コミュニティー・カレッジに進学する学生の約8割が4年制大学への転学を希望し、実際にトランスファーできる学生は4分の1です。しかも、学位を取得できる学生はトランスファー学生の6分の1です。コミュニティー・カレッジは、学生や教員の質にばらつきがあり、トランスファー後に成績が下がってしまうことがあるのです。
また、全米のほとんどの4年制大学では、1学期でも他大学(コミュニティー・カレッジ含む)で学んだ学生はトランスファーの対象となります。これに対し、カリフォルニアの州立大学は3年生からのトランスファーしか認めません。3年目の転学で失敗した場合、将来の選択肢が狭まります。
さらに、UCやUWは知名度が高く、他州からトランスファーを目指す学生も少なくないですが、単位互換協定を結んでいない大学で履修したクラスについては、私立大学と同様に単位認定の問題があります。
学費を考慮したトランスファー
トランスファーが学費で有利とは限りません。トランスファー学生にとって、奨学金の獲得は通常のアドミッション以上に狭き門となる可能性があるからです。メリットベースの奨学金を獲得したい場合、トランスファーは避けるべきです。各大学はフレッシュマンで進学する学生に対しては、多くのメリットベースの奨学金プログラムを用意していますが、トランスファーで進学する学生向けの奨学金は限られています。
ファイナンシャル・ニードが大きく、学費の大部分を大学に負担してもらえる学生の場合は、そもそもコミュニティー・カレッジに進学するメリットはありません。ニードベースの奨学金が充実している大学に最初から進学すればいいのです。
また、トランスファーのリスクは、単位や学費だけではありません。アメリカの大学は、4年間在籍することで、短期留学、インターンシップ、リサーチ・プロジェクトなど全てのプログラムを享受できます。トランスファーをする学生は、このような機会の多くを失うのです。可能な限り、フレッシュマンから自分に合う4年制大学を目指すことをお勧めします。
(2024年9月号掲載)
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