2020年秋、大学入学を延期するべきか

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「2020年秋に大学に進学するのは正しい選択でしょうか」という質問を多く受けます。新型コロナウイルスの収束時期が不明確であることから、今春高校を卒業して進学する大学が決まっていても、入学の延期を検討する学生が増えています。今回は、今秋の入学を延期するべきかどうかについて解説します。

秋学期もオンラインか?

高校の授業が突然打ち切られ、卒業式のセレモニーやプロムを失った12年生にとって、まだまだ不安な日々が続きます。進学する大学が決まっても、その大学のキャンパスが8月に再開されるのか、もしキャンパスが開いたとしても、その時期に2人部屋の寮に入るのは安全なのか、入学後も学費を払い続けられるのか、悩みは尽きません。
多くの大学は20年春学期の途中でキャンパスを閉鎖し、学期の後半は遠隔授業で対応しました。サマープログラムもオンラインで乗り切り、秋学期には、通常通りキャンパ スで新入生を迎えられることを、どの大学も願っています。 しかし、対面授業を21年まで 再開しない可能性を検討する大学も増えています。アメリカの大学に進学する学生は、単位取得だけを目的に高い学費を払うわけではありません。教授からきめ細かな指導を受けながら学力を高め、さまざまなバックグラウンドを持つ学生と交流して視野を広げ、スポーツやボラン ティア活動を通じて人間的に成長し、海外留学やインターンシップに取り組んでキャリアの準備をするなど、充実したキャンパスライフを送ることが目的です。大学のオンライン授業に価値を見いだす学生は少なく、春学期の学費返還訴訟が全米で相次いでいるのもうなずけます。

ギャップイヤーという選択

そこで、高校卒業後に1年間ギャップイヤーを取るという選択肢が浮上します。例年、大学に進学する学生の約2%が進学前にギャップイヤーを選択していますが、今年はその割合が大きく増える可能性があります。ギャップイヤーは今までとは全く異なる環境に自分の身を置き、今までできなかったさまざまな活動に取り組む時間を持つことが本来の目的ですが、それをキャンパスが通常運転に戻るまでの時間稼ぎに使うという考え方です。
近年、ギャップイヤーの価値が高く評価され、最長1年の入学延期を認める大学が増えています。例えば、ノースカロライナ大学は、大学がギャップイヤープログラムを主催して学生に提供するサービスを提供し、フロリダ州立大学では、ギャップイヤーを取る学生に対して、最大5000ドルの活動資金補助を行っています。
ギャップイヤーは大学進学前に、社会奉仕活動や海外での異文化体験、インターンシップなどに取り組むことで、人間として成長し、大学生活に生かしてもらうことが目的です。パンデミックが収束するまでは、それらの活動が大きく制限される可能性がありますが、多くの大学は、学生が安心して大学生活を送れるようにするため、猶予を与えることに理解を示しています。
外国人留学生にとっても、ギャップイヤーの選択肢は重要です。学生ビザを取得するためには、自国の米国大使館・領事館で面接を受ける必要がありますが、ビザ業務が3月に停止した影響で、学生ビザの発給に大きな遅れが生じています。ペンシルベニア大学は、20年秋入学を予定している外国人留学生全員に対して、ギャップイヤーを取って入学を1年延期するオプションを提示しました。

大学入学を延期するべきか

20年秋に大学に進学するのか、それとも入学を来年に延期するのか、秋学期の運営形態が、判断の基準の一つになると思います。完全通常運営と完全オンラインの2択とは限りません。各大学では、秋学期の開始を遅らせる方法や、新入生を優先的にキャンパスに迎える方法など、さまざまな対応策が水面下で検討されているので、注意深く見守りましょう。
入学延期を検討する場合、まず、進学予定の大学が1年後に今と同条件で入学を認めるかどうかを確認します。リクルートされたアスリートなど、ギャップイヤーが認められないケースがあるからです。また、現在提示されている奨学金が、ギャップイヤーを取ることで失われないかどうか、担当者にきちんと問い合わせることをお勧めします。入学延期ですべての問題が解決されるわけではありませんが、ギャップイヤーという選択肢もあることを頭に入れ、自分に合った方法を探してみてください。

(2020年5月16日号掲載)

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