大学のスポーツビジネス

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大学スポーツの収益

テキサス州知事は、2020年秋に行われるカレッジフットボールの試合の観客数は定員の50%に制限されるだ ろうとの見通しを示し、話題になりました。テキサス大学が使用するテキサス・メモリアル・スタジアムの定員は9万5594人、テキサスA&M大学が使用するカイルフィールドの定員は10万2733人です。新型コロナウイルスの収束には程遠く、シーズン開幕を危ぶむ声も聞かれる6月中旬の段階で、5万人の観客動員が容認された背景には、大学スポーツが地域経済に与える影響の大きさがあります。大学の運動競技部門は、大学内の組織ではありますが、テキサス大学のような大規模大学では独立採算で運営されています。18-19年度のテキサス大学運動競技部門の収益は約2.2億ドル(約234億円)です(右下の表参照)。一橋大学の大学全体の収益が約114億円であることと比較すると、その大きさが分かります。重要なのは、支出の内訳です。学生の奨学金に1200万ドル以上が充てられています。また、その他の支出に6400万ドル以上が使われていることから、学内のさまざまな施設や研究活動が運動競技から支えられていると分かります。州立大学にとって、スポーツの収益は重要です。

大学運営を支える2競技

テキサス大学は、男子7競技、女子9競技のチームを有しますが、収益競技と呼ばれているのは、フットボールと男子バスケットボールだけです。この2競技が利益を生まない他の競技を支えていると言っても過言ではありません。20年は、マーチマッドネス(NCAAの男子バスケットボールのトーナメント)がキャンセルになりました。NCAAから各大学への分配金の合計は、当初6億ドルが予定されていましたが、マーチマッドネスの中止に伴い、2億2500万ドルに削減されました。NCAAの分配金は、D-(IディビジョンI)の大学だけでなく、D-IIやD-IIIの下位の大学にも行き渡ります。そして、NCAAの分配金は学生の奨学金の原資です。つまり、マーチマッドネスの中止の影響は、全米の学生に及ぶことになります。かといって、利益を生まない女子チームを 閉鎖することは、連邦法のTitle IX(教育機関における性差別の禁止)に抵触します。

秋のフットボールの行方

20年は、マーチマッドネスの直前に行われるカンファレンスのトーナメントも中止となり、男子バスケットボールによる収益を失った大学 にとって、秋のフットボールシーズンも失えば、チーム運営に甚大な影響を及ぼします。NCAAは秋学期にスポーツを再開するための計 画を5月に発表し、学生アスリートは6月からキャンパス内での自主トレーニングが可能となりました。8月からキャンプを開始し、9月初頭から当初の予定通りフットボールシーズンを開始するという算段です。

しかし、自主トレとはいえ学生が移動すれば、感染リスクは高まります。20年にNCAAのフットボールのプレーオフで準優勝したクレムソン大学は6月19日、優勝したルイジアナ州立大学は翌20日に所属する選手の新型コロナウイルスの感染を発表しました。そして、ジョージタウンやバックネルなど 東部の名門私立大学が所属するペイトリオットリーグは、6月22日にシーズンの開始時期を遅らせると発表しました。秋のフットボールは待ちに待ったイベントであり、誰もが全試合が滞りなく実施されることを期待していますが、大 学スポーツは教育の一環であり、まずは学生の安全をしっかり確保して運営してほしいものです。また、今後、この財政の変化がチーム運営や奨学金にどのように影響するか注視する必要がありそうです。

テキサス大学運動競技部門の収支 2018-19年度 (USD)

収入 入場料 66,771,366
スポンサー 53,245,181
放映権・ライセンス 88,768,322
学生負担金 0
大学負担金 0
その他 10,617,710
総収入 219,402,579
支出 コーチ・スタッフ給与 68,266,860
学生の奨学金 12,655,927
施設・管理費 60,858,588
その他 64,773,057
総支出 206,554,432

(2020年7月16日号掲載)

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