アメリカの大学では、出願書類をオンラインで受け付けるのが一般的です。個々の大学が独自のアプリケーション・フォームを用意している場合もありますが、近年は複数の大学で共通で利用できるアプリケーション・サービスを採用する大学が増えています。中でも、最も多くの大学に採用されているのが「コモン・アプリケーション」です。
コモン・アプリケーションは、非営利団体によって運営されている、大学(学部)のアプリケーションのサービスです。このサービスを利用することで受験生にとっては複数の大学を受験しやすくなり、大学側にとっても、受験者数の増加が見込めるため、年々採用する大学が増え、2016-17年度は約700校に導入されています。
コモン・アプリケーションは、アイビー・リーグの各大学をはじめ有名私立大学にアプライするためのシステムとして知られていますが、120校以上の州立大学でも採用されています。また、アメリカの大学だけではなく、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、カナダなど15カ国46校で採用されています。日本では同志社大学が国際教養コースで採用しています。
新エッセイの概要
コモン・アプリケーションのライティング・セクションでは、メインの「パーソナル・エッセイ」と、追加提出が可能な「アディショナル・インフォメーション」の2つのエッセイを書けます。
17-18年度のアプリケーションから、パーソナル・エッセイのトピックが改定されます。4年前のような全面的なリニューアルではなく、既存のテーマの手直しと、2つのトピックを追加した程度の小規模の改定です。新年度のパーソナル・エッセイでは、7つのトピックから1つを選んで書きます。アディショナル・インフォメーションは、自由なトピックで書けます。語数制限はどちらも650語以内です。
今回の改定は、昨年誕生したコアリション・アプリケーションとの競合をにらんで、学生がより取り組みやすくなるように、エッセイの幅を持たせたと考えられます。学生にとっても、創造力が発揮しやすくなる点で、歓迎できることだと思います。
トピック1
自分自身のアイデンティティーの核となる背景やストーリーがあり、それなしでアプリケーションは完結できないと信じている学生がいます。あなたもそうなら、そのストーリーを聞かせてください。
トピック2
私たちが遭遇する障害に取り組むことは、後の成功の基礎となります。あなたが挑戦、挫折、または失敗に直面した時を思い出してください。それはあなたにどんな影響を与えましたか? その経験から何を学びましたか?
トピック3
あなたがある信念や考え方に疑問を呈したり、挑戦したりした時のことを思い出してください。あなたはどう考えましたか? 結果はどうでしたか?
トピック4
あなたが解決した課題や解決したい課題について述べてください。知的な挑戦、研究上の疑問、倫理的な葛藤など、個人的に重要なものであれば、規模は問いません。あなたにとっての重要性を説明し、解決策を特定するために取った手順を示してください。
トピック5
成果や出来事、新たな認識など、自分自身の成長や自分や他人に対する新しい理解をもたらした事柄について説明してください。
トピック6
時間を忘れて取り組みたくなるようなトピック、アイデア、コンセプトを説明してください。なぜそれはあなたを惹きつけるのですか?何が(誰が)あなたをそうさせたのですか?
トピック7
あなたが自由に選んだトピックについてエッセイを書いてください。あなたがすでに書いたもの、異なる質問への回答、あなた自身が考案したものなど、何でも結構です。
エッセイのまとめ方
重要なのは、どのトピックを選ぶかではなく、自分自身の何を伝えたいのかです。従って、トピックを選んでから書くのではなく、伝えたいストーリーをしっかり作り上げて、それにふさわしいトピックを後から選ぶ方が良いでしょう。ストーリーに合うトピックが選べなければ、自由に書けるトピック7を選択すれば問題ありません。 人物評価を重視するアメリカの大学のアドミッションでは、エッセイによる人物評価が極めて重要です。エッセイを書く際にはしっかりと自己分析をして、他の人と比べた時に自分の価値や強みは何か、よく考えましょう。そして、自分自身が今までどのように成長してきたのか、また今後何を目指して生きていくのか、具体的な経験を交えて伝えてください。
(2017年4月16日号掲載)