教育界の新型コロナウイルスへの対応

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今春、新型コロナウイルスが高校生の進学準備に大きな影響を及ぼしました。今回は、教育機関がどのような対応を行っているかを解説します。

デッドラインの延長

2020年秋の大学進学を目指すハイスクールのシニアにとって、今回のパンデミックは最悪のタイミングと言わざるを得ません。受験生が進学先を決めるデッドラインは、5月1日です。通常、アプライした大学の結果は3月末に出揃い、受験生は合格大学の中から進学する大学を決めて5月1日までにデポジットを納めて大学の籍を確保します。進学先を選ぶ上で、大学との相性は極めて重要です。受験生は合格後にキャンパスを訪問し、授業に参加したり、寮に泊まったりしながら、自分に合うかを見極めます。大学は合格者向けのイベントを3、4月に行うのが通例ですが、20年はその多くがキャンセルされました。キャンパスの閉鎖に伴い、個別の訪問もままならない状況で、受験生は進学先選びに苦慮しています。NACAC(全米大学入学カウンセリング協会)は、各大学に対してデッドラインの延長を求め、多くの大学がデッドラインを5月1日から6月1日に変更したり、受験生の事情に応じて柔軟な対応を取ったりするなどの措置を講じています。受験生は、各大学のアドミッションに連絡を取り、個別のニーズを伝えることをお勧めします。デッドラインが延びてもなお訪問が難しい場合、アドミッションが提供するオンラインのサービスを活用してください。ウェブサイトで大学を見学するバーチャルキャンパスツアーは、すでに多くの大学が提供しています。さらに、合格者が在学生とオンラインで会話ができるオンライングループを開設する大学も増えています。実際のキャンパス訪問と同じ効果が得られるわけではありませんが、在宅でも判断材料を集めることは十分可能です。

アドミッションテスト

新型コロナウイルスの影響を受けているのは、受験生だけではありません。進学準備を進めている高校生にとっても深刻です。3月と5月のSAT、4月のACTがキャンセルとなりました。6月以降にテストが再開しても、会場不足などで影響を受ける生徒が続出することが予想されます。テスト主催者が夏以降にどのような救済策を提示するのか、また、これを機にテストスコアの提示を求めないテストオプショナルを採用する大学がさらに増えるのか、現時点では何とも言えませんが、いずれにせよ20-21年度のアドミッションで大きな変化があることは間違いありません。また、テストのオンライン化対応も進んでいます。ETSは、英語が母国語でない学生が受験するTOEFLや大学院受験者が受けるGREを、オンラインで提供すると発表しました。4月2日より、北米、欧州、日本など、中国本土とイランを除くほとんどの国の学生が、自宅でテストを受けられるようになりました。

APプログラム

AP(アドバンスト・プレイスメント)のテストもオンラインで受けられるようになります。APは、高校在学中に、大学のイントロレベルのカリキュラムが学べるプログラムです。APコースの履修者は5月初旬に全世界共通のAPテストを受け、1から5まで(5が最高)で評価されます。APプログラムを運営するカレッジボードは、学校でAPの授業が受けられなくなった生徒向けに、APの復習コースをオンラインで提供しています。これはカレッジボードのYouTubeチャンネルで無料で視聴できます(youtube.com/advancedplacement)。本来、APテストは3時間前後の長丁場のテストですが、20年は45分の自由記述方式の簡略版テストがオンラインで受けられるようになります。コンピューターやタブレット、スマートフォンなど、あらゆるデバイスからアクセスでき、手書きの解答を画像で提出することも可能です。一般的な高校生が3月上旬までに学んだ範囲から出題されます。APプログラムは、一定の成績を修めるとアメリカの大学で単位として認定されることが魅力の一つです。20年の簡略版テストによる成績でも同様に単位認定されるのかどうか気になるところですが、通常のテストと同等に扱われる見込みです。高校のカリキュラムが遅れたり、オンライン化によって、思うように学習が進められない人も多いですが、苦労しているのは皆同じです。大学も、状況を鑑みて柔軟な評価をするので、高校生の皆さんは諦めずに今自分ができることに精一杯取り組んでください。

(2020年4月16日号掲載)

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