デュアルエンロールメントの概要と活用方法

ライトハウス電子版アプリ、始めました

アメリカの大学生は、日々、多くの時間を学習に費やします。学習量や学習方法など、高校との違いに戸惑う新入生は多く、入学早々、学習でつまずくことは少なくありません。学生が高校から大学へ円滑に移行できるようにサポートすることは、高校と大学にとって極めて重要な取り組みであり、その一環として、デュアルエンロールメント(Dual Enrollment)プログラムが提供されています。

大学レベルの先取り学習

デュアルエンロールメントは、高校生が大学レベルのクラスを履修し、高校と大学の単位を取得できるプログラムです。高校生が大学レベルの内容を学習する早期履修プログラムでは、アドバンスト・プレイスメント(AP)や国際バカロレア(IB)がよく知られています。カレッジボードが運営するアドバンスト・プレイスメントプログラムは、米国やカナダの大学で単位認定が受けられ、また国際バカロレアが運営する国際バカロレアディプロマプログラムは、欧州で広がり、日本の文科省も推進するなど、どちらもグローバルな大学入学準備プログラムとして、世界的に認知されています。
 
これに対してデュアルエンロールメントは、特定の地域におけるローカルなプログラムとして運営されています。学区とコミュニティーカレッジなどの公立大学が共同で実施する場合が多く、州政府などから経済的支援を受けて運営するのが一般的です。プログラムの呼称は自治体によって異なり、例えばカリフォルニア州やユタ州ではコンカレント・エンロールメント、またハワイ州やワシントン州ではランニング・スタートと呼ばれています。
 
デュアルエンロールメントのコースは、コミュニティーカレッジや州立大学のキャンパスで提供される場合が多く、授業は大学の教員が行います。高校在学中に大学の授業を体験できるため、学力面だけでなく、心構えという点においても、貴重な進学準備の機会となります。
 
一方、高校生が放課後に大学に移動するのは、時間や交通手段で難しい面があります。そのため、自治体によってはデュアルエンロールメントのコースを高校内で提供しています。その場合は、大学から認定を受けた高校の教員が授業を行います。キャンパスライフを肌で感じることはできませんが、慣れた環境で学習できるので、高度な内容にも取り組みやすいというメリットがあります。

目的に応じた選択を

デュアルエンロールメントで提供されるのは、大学のエントリーレベルのコースが多く、同じコースが、デュアルエンロールメントとAPプログラムの両方で履修できる場合があります。その際は、双方の特徴を良く理解した上で、目的に合った選択をすることが重要です。
 
実際の大学体験が自分にとって重要ならば、大学のキャンパスで受講できるデュアルエンロールメントは大変魅力的です。大学のキャンパスに出向けば、さまざまなコースを履修できます。人類学、アジア史、マーケティング、ロシア語など、APでは提供されていないコースでもデュアルエンロールメントなら履修可能です。デュアルエンロールメントでは、アカデミックなコースだけでなく、コミュニティーカレッジが提供するキャリア支援コースも選択できます。美容、料理、自動車整備、プログラミング、簿記会計などを履修し、高校在学中に仕事に直結するスキルが習得できるのも、デュアルエンロールメントの強みと言えるでしょう。
 
一方で、大学進学時に単位として認定してもらうことが主目的の場合は、少し複雑です。デュアルエンロールメントの運営に直接関与している公立大学では問題なく単位として認定されるコースでも、私立大学や他州の大学では単位として認定されないことがあります。特に、コミュニティーカレッジからの単位の移行に消極的な難関大学で、その傾向が強いです。米国外の大学への進学を目指す学生も、APを選んだ方が無難です。アドミッションにおけるAPプログラムの評価は、カナダやヨーロッパで既に確立されていますが、ローカルなデュアルエンロールメントがどの程度評価されるかは未知数だからです。

事前準備が成功の鍵

デュアルエンロールメントを始める際に最も重要なのは、事前準備です。高校生が大学レベルのコースにチャレンジすることは素晴らしいですが、決して楽なことではありません。自分に合わないコースを履修してしまい、途方もない時間と労力を費やすことはよくあります。
 
デュアルエンロールメントの履修を希望する高校生は、履修前に高校でカウンセリングを受けて、コース選びなどの相談ができます。また、大学で学ぶ際に必要となるスタディースキルを習得するためのワークショップなど、事前の準備を行う機会も得られます。高校や大学のこのようなサービスを利用して、きちんと準備をして臨むことが、成功への近道でしょう。
 
(2018年8月16日号掲載)

海外に暮らす学生のための「日本の大学への進学&留学ガイド」サイト

「アメリカ大学進学ガイダンス」のコンテンツ