2020年初頭に、Harvey Mudd CollegeとCaltech (California Institute of Technology)が、次年度からSAT Subject Testのスコア提出を受験要件から外すと発表しました。これにより、アメリカでSAT Subject Testの受験を義務付けている大学は、MIT(Massachusetts Institute of Technology)1校となりました。これから進学の準備を行う高校生は、SAT Subject Testをどのように考えれば良いのでしょうか。
SAT Subject Testとは
レッジボードが主催するアドミッションテストはSATとSAT Subject Testの2種類があります。SATは英語と数学のテストで、今でも多くの大学がスコアの提出を要求しています。これに対して、SAT Subject Testは、自分で科目を選んで受けるテストです。数学、科学、歴史などの主要科目や、スペイン語や中国語、日本語などの言語科目など、合計20科目があります。どちらも年に数回の受験機会がありますが、両方を同日に受験することはできません。アイビーリーグをはじめとする難関大学の受験にはSAT Subject Testのスコアを3科目提出するのがかつての常識でした。しかし、要件は徐々に緩和され、10年にHarvard UniversityとGeorgetown Universityが3科目提出の要件を外し、今では3科目必要な大学はなくなりました。2科目を要求する大学も少なくなり、UC(University of California)Systemの各校は、12年から2科目のスコア提出を出願要件から外しました。さらに15年にUniversity of Pennsylvaniaがスコア提出を出願要件から外して以降、SAT Subject Testのスコア提出を必須から任意に変更する大学が一気に増えました。
受験生の負担が軽減
SAT Subject Testが必須要件から外される理由は、受験生の負担軽減です。指定日に受験が困難、テスト会場へのアクセスが困難など、経済的な理由以外にも受験が難しい場合があり、そのような生徒がアドミッションで不利になることを避けるのが目的です。このテスト自体、専門家の中でも賛否が分かれています。中には、SAT Subject Testは、SATよりも遥かに価値があると考えているアドミッション担当者もいます。一方、カレッジボードがSATとACTのシェア争いに注力するあまりSAT Subject Testのアップデートを怠ったことが、価値の低下を招いたと指摘する専門家もいます。
STEM系大学での活用
AT Subject Testを要求してきた大学の多くは、STEMに力を入れている大学です。例えば、Cooper Union、Cornell University、Tufts University、Web Instituteは、工学系の専攻を目指す学生に対してSAT Subject Testの提出を最近まで要求していました。冒頭で紹介したCaltechとHarvey MuddはSTEM系の名門です。SAT Subject TestのMathematics Level 2、Physics、Chemistryなどのスコアは、受験生のSTEM系の適性を見極める上で価値があると考えられています。そこで、前述の各大学は、SAT Subject Testを必須条件から外した後も、理数科目のスコア提出を推奨しています。MITがいまだにSAT Subject Testを義務付けているのも、同様の理由です。
テスト受験の必要性
SAT Subject Testを受験する必要があるか否かは、学生により異なります。高校でAPやIBなどのコースを履修していて満足のいく成績を収めている場合、必要性は高くありません。ただし、成績評価を重視したアドミッションを希望する場合、SAT Subject Testで高得点を目指すことは効果的です。また、高校の成績で実力を出しきれなかった場合は、SAT Subject Testのスコアで学力を示すことが重要となるかもしれません。前述のとおりSTEM系の進学を目指す場合は、数学や科学のSAT Subject Testを受けておくことをお勧めします。一方、スポーツや芸術など特別な能力を重視したアドミッションを狙う学生にとって、SAT Subject Testは不要かもしれません。また、言語のAPコースを履修している場合、その言語のSAT Subject Testのスコアは不要です。しかし、APコースを履修していないけれどアドミッションで言語能力を示したい場合は、SAT Subject Testが役に立ちます。ほとんどの大学では、SAT Subject Testのスコアをアドミッションで評価してくれます。提出を推奨している大学や学部を受ける場合は、極力提出するようにしてください。
(2020年3月16日号掲載)