アメリカの大学では、出願書類をオンラインで受け付けるのが一般的です。個々の大学が独自のアプリケーション・フォームを準備している場合もありますが、近年は複数の大学で利用できる共通の出願システムを採用する大学が増えています。中でも最も広く利用されているのが、「コモン・アプリケーション」です。今回は、今年からさらに進化したコモン・アプリケーションの仕組みや変更点についてお話しします。
コモン・アプリケーションは、非営利団体によって運営されている、大学(学部)へ出願するためのシステムです。これにより、複数の大学に出願する受験生の負担が大幅に軽減され、受験しやすくなります。受験者数の増加が見込めるため、年々採用する大学が増えており、2013~14年度は全米約500校で導入されています。
コモン・アプリケーションはアイビー・リーグを始め有名私立大学に出願するためのシステムとして知られていました。しかし、現在では70校以上の州立大学でも採用されているほか、ヨーロッパの大学でも導入されています。
新コモン・アプリケーションの特徴
13年8月1日に新コモン・アプリケーションが公開されました(www.commonapp.org)。見た目も大きく変わりましたが、最も大きな変更点は、ライティング(論文)のセクションです。昨年までは、「ショートアンサー」、「パーソナル・エッセイ」、「アディショナル・インフォメーション」の3つに分かれていましたが、今年から「ショートアンサー」がなくなり、「パーソナル・エッセイ」と「アディショナル・インフォメーション」の2つのエッセイを準備することになりました。
ライティング・セクションの中核となる「パーソナル・エッセイ」では、そのトピックが刷新されました。与えられた5つのトピックから1つ選び、それについてエッセイを書きます。単語数の制限も、昨年までの500単語から650単語に変更されました。
また、「パーソナル・エッセイ」の提出方法も変わりました。昨年まではワード等で作成した文書ファイルをアップロードして提出していましたが、今年からウェブ上で直接入力するようになりました。アップロード方式では、多少単語数の制限を超えていても提出できましたが、今後は、単語数制限を超えたエッセイは一切提出できません。なお、利用できる文字の装飾は太字、斜体、下線の3種類です。
「アディショナル・インフォメーション」では、アプリケーションの中で伝えきれなかったことについて説明します。このエッセイの提出は任意です。提出方法は、基本的には昨年までと変わっていませんが、「パーソナル・エッセイ」と同様、アップロード方式からタイプ方式になり、単語数制限は650字以内に変更されました。
エッセイの基本は自分自身の振り返り
「パーソナル・エッセイ」のトピックが一新された背景には、エッセイによる人物評価を重視したいという大学側の思惑があります。新しいトピックは、学生に内省を促し、自分自身の価値を認識し表現させることを重視した内容となっています。
従って、エッセイを書く際にはしっかりと自己分析をして、他人と比べた時に自分の価値や強みは何か、よく考えることが大切です。そして、自分自身がこれまでどのように成長してきて、今後は何を目指して生きていくのか、具体的な経験を交えて伝えましょう。
「パーソナル・エッセイ」のトピック例 |
●トピック1 自分のアイデンティティーの核となるバックグラウンドや、それにまつわるストーリーを持っている学生は、その説明なしではエッセイを完成できないと信じています。あなたがそうであれば、そのストーリーを聞かせてください。 |
●トピック2 あなたが失敗した出来事や、その時期について詳しく聞かせてください。その経験はあなたにどのような影響を与え、あなたは何を学びましたか。 |
●トピック3 あなたが、ある信念や考え方に挑戦した時のことを思い出してください。何があなたにそうさせたのでしょうか。また、同じ挑戦をもう一度しますか? |
●トピック4 あなたが心から満足できる場所や環境を教えてください。あなたはそこで何を行い(経験し)ますか。また、なぜそれがあなたにとって重要なのですか? |
●トピック5 あなたが属している文化やコミュニティーや家族の中で、あなたを子供から大人に成長させた(公式または非公式の)成果や出来事について話してください。 |
(2013年9月16日号掲載)