大学のアドミッションが変化し続けていることは以前もご紹介しましたが、今年(2012)も新たな動きがいくつかありました。その一つとして今回は、「ウェイトリストの積極活用」についてお話しします。
学生を見極めるウェイトリストとは?
ウェイトリストとは、欠員補充のための"補欠学生リスト"です。学生は複数の大学を受験するため、大学側は定員よりも多くの学生に合格通知を送ります。歩留まり(入学率)を予想しながら合格者数を決めるものの、合格者中、何人が入学するかを正確に予想することは難しいため、合格発表後も定員に達するまでウェイトリストから学生を繰り上げ合格させます。
ところが昨年(2011)あたりから、学生を見極める手段としてこのウェイトリストを積極的に活用する大学が出てきました。ボーダーライン上の学生を多めにウェイトリストに掲載し、その後の学生の反応を見ながら繰り上げ合格を決めていくのです。
ウェイトリストに入った学生にはその旨の通知が届き、アドミッションを継続するかどうかの意思確認をします。すでに他校に合格し、繰り上げ合格に興味のない学生は通知を放置しておいても大丈夫です。手続きをしなければ、自動的にリストから名前は削除されます。
逆に、その大学に行きたいという希望を強く持っている学生は、そのままアドミッションを継続してもらうために、期間内に所定の手続きを取らなければなりません。それと同時に、 自分を強く売り込みます。(売り込み方は後述)
最終的な合格者の絞り込みを行う際、このように学生の反応を見ながら選べるのは大学にとって大きなメリットです。アドミッションの評価で大きな違いがなければ「気に入った大学なので、ぜひ進学したい」という学生を優先して選びたいと大学は考えています。なぜなら、その大学を気に入って入学する学生は、その後も頑張ることが期待できるからです。
また、大学に興味がなくなった学生をリストから外すことで、結果的に合格者における入学率が高まります。この歩留まりの向上も、実は大学にとって大きなメリットなのです。歩留まりの高い大学は、それだけ人気の高い大学であることを意味します。そのため、合格者に対して入学する学生の割合を少しでも上げたいというのは、アドミッション担当者の共通の願いです。
リストに入った場合の具体的な対応方法
ウェイトリストの積極活用は大学側にとって大きなメリットがありますが、リストに入った学生はどう対応をすれば良いのでしょうか。
ウェイトリストが作られた時点ではリスト内に学生ランキングはなく、その後の学生の反応でランキングが作られます。つまり、ウェイトリストに載せられた後の対応次第で、自分を少しでも有利なポジションに持っていくことが可能となるのです。
ウェイトリストに入った大学に進学を希望する学生は、まず大学にアドミッション継続の意思を伝えます。そして追加の情報を提示し、再評価を依頼します。ポイントは、「なぜその大学が自分に適しているのか」と「自分がその大学のためにどんな貢献ができるのか」の2点をきちんと伝えること。堤出したアプリケーションに記載済みでも、再度伝えることは可能です。また、アプリケーションに未記載の追加情報や、堤出後に達成したことなどがあれば、それらも簡潔にまとめて伝えます。重要なのは、「自分がその大学にとって価値のある学生であること」をきちんと示すことです。
このように、ウェイトリストを積極的に活用する大学が昨年から増え始め、今年一気に広がった気がします。大学にとってメリットが大きいため、来年度以降もこの傾向は続くと考えられます。
一方、ウェイトリストに入ることで受験生はさらに一手間増えることになりますが、新たな自己PRの機会を得たと考え、このチャンスをぜひ活用してください。
なかには、「ウェイトリストからの合格ではファイナンシャルエイドは期待できない」と決め付ける方もいらっしゃいますが、それは早計です。もちろん、ウェイトリストからの合格やスカラシップの獲得は決して楽なことではありませんが、リストに入るということは、少なくとも"合格に足る学生"の評価を得ているわけです。自信を持って、大学に自分を売り込んでください。
(2012年6月16日号掲載)